戦中教会の尋問書、宗教統制を読み解く 国家の論理に回収される道筋 評・吉馴明子=恵泉女学園大学名誉教授

『知られなかった信仰者たち 耶蘇基督之新約教会への弾圧と寺尾喜七「尋問調書」』 川口葉子・山口陽一共著、いのちのことば社、990円税込、四六判

 本書は「耶蘇基督之新約教会」(戦後はイエス・キリストの教会と呼ばれる)の紹介と、1941年9月の治安維持法違反で一斉検挙された38人の一人で、同教会の代表者格であった寺尾喜七の尋問調書とからなる。序は山口陽一の「耶蘇基督之新約教会」の概括的紹介と、本研究の課題を明示する。

 本論は川口葉子の執筆。第一章「森派の信仰」では、教会と信仰の来歴と特徴を明らかにする。創始者森勝四郎は明治学院神学部などで学び、1913年ごろ安芸基督教講義所を設立。彼の高弟たちが東京、静岡、神戸などで教会を建てた。信者は家族、使用人を含めて安息日を厳守した。また偶像礼拝を禁じ、村祭り不参加、子どもにも(御真影の下での)学校儀式を欠席させた。、、、、、

2020年5月3日号「憲法特集」に掲載