学校、哲学、改革長老派神学、教育史の視点 問題は深刻化している 信州夏期宣教講座編『天皇制と平和憲法』 評 袴田康裕=神戸改革派神学校教授

『天皇制と平和憲法』信州夏期宣教講座編 岡田明・福嶋揚・瀧浦滋・辻直人、いのちのことば社、1,650円税込、A5判

 1993年8月から始まった「信州夏期宣教講座」は、日本宣教の課題に真正面から取り組む学びの合宿を毎年行い、その講演をパンフレットとして出版してきた。とりわけ、日本のプロテスタント教会の負の歴史に焦点を当て、日本の教会が乗り越えるべき課題を鋭く提示し続けてきた。その意味でこの講座は、歴史に残るような大きな貢献をしてきたと思う。先日、この講座で大きな貢献をされた渡辺信夫先生が召天されたが、渡辺先生を始め、講座関係者の継続的な努力を心に覚え、まず敬意を表したい。

 本書は2017年から19年に行われた天皇制と憲法に関連する四つの講演を収録している。昭和から平成の代替わりの際と異なり、今回の天皇代替わりに対するキリスト教会の反応はかなり鈍いものだった。出版で目立ったのは、松谷好明著『キリスト者への問い あなたは天皇をだれと言うか』(一麦出版社、2018年)と、「教会と政治」フォーラム編『キリスト者から見る〈天皇の代替わり〉』(いのちのことば社、2019年)くらいである。反応が鈍かったからと言って、問題の本質が変わったわけではない。むしろより深刻化している。その意味で、改めて天皇制について学ぶことができる書物が出版されたことをまず喜びたい。

 収録されている講演は次の四つである。①岡田明「天皇は憲法と皇室典範にどう位置づけられたか?」、②福嶋揚「憲法九条とキリスト教」、③瀧浦滋「キリスト王権の聖書的考察」、④辻直人「1930年代のキリスト教学校と天皇制」。

 本書の特徴は、4人の講演者の個性が色濃く出ていることである。、、、、、

2020年5月3日号「憲法特集」に掲載