チャプレンの祈り 院内放送で 沖縄県那覇市 社会医療法人 葦の会/オリブ山病院

沖縄では7月以降、在沖米軍基地内でのべ132人(7月15日現在)の感染者が確認されるなど基地内での感染が広がっており、県民に不安が広がっている。地域医療と共に介護支援の働きを担う社会医療法人 葦の会オリブ山病院(宮城航一院長)=沖縄県沖縄市首里石嶺町4丁目356=では3月上旬から院内で新型コロナウイルス感染症(以下・新型コロナ)対策を開始した。宮城院長、伝道連携室チャプレン主任の具志堅正都氏に話を聞いた。 【中田 朗】

本館入口で来院者をチェック

3月上旬からコロナ対策を始められたとのことですが、キリスト教病院としてどんな取り組みをされたのでしょうか。
宮城 幹部職員に対する新型コロナ感染症について講義することからスタートしました。医療関係者の感染予防には、新型コロナに対する知識が大切です。当院では新型コロナが広がる前から、職員の家族に発熱者が出た場合は、職員を休ませるという対応をしてきました。インフルエンザなどを高齢者の患者さんにまん延させないという意識からです。この対応を今回も継続しています。
キリスト教病院だからという取り組みに関しては、朝礼が中止になったために、朝礼におけるチャプレンのお祈りが全館放送の形になりました。職員礼拝も離れて座るようにし、スタッフ同士の距離、患者との距離を取らないといけないので、触れ合いによるコミュニケーションが希薄になってしまうことを心配しています。

基礎疾患を持つ患者や入院、通院する高齢者を感染から守るための対応は?
宮城 お見舞いに来られる方から患者に新型コロナが感染するとクラスター感染が起こる可能性があり、どうしてもお見舞いを制限せざるを得ない状況です。緩和ケアホスピスに入院中の方々にも同じ感染対策を適応すべきか大いに迷いました。沖縄の場合、感染者数は7月12日現在148人で、確率から言うと1万人に一人です。明日看取られるホスピス入院中の患者に家族を会わせないというのはひどい話です。他の病棟より面会は緩くなったと思いますがスタッフには多忙な中、感染対策として消毒を徹底してもらいました。

院内放送中。祈りが病院全体に届くようになった

新型コロナ感染者を受け入れる急性期病院は患者収容のベッドを用意しなければならず、感染者でない患者を亜急性期病院に転院させ、感染者用病床・病棟を準備しますが、我々の病院は転院者を受け入れることで貢献していることになります。
患者さんの中に施設に入所しておられる方もいます。通常は家族に伴われて受診してきますが、入所施設は病院受診でも施設外に出すことに慎重になっており、家族が入所者のお見舞いのため面会することも禁じていました。この状況下、家族だけが薬をもらいに受診されますが、家族に様子をお聞きしても様子がわからないという困った状況も発生しました。
患者や家族が通院せず、電話再診という診療形態も許されるようになりましたが、認知症者が多い高齢者は様子を伺うも要領を得ず、この期間に状態を悪くしてしまった患者もいたので、緊急事態宣言中止で、患者を直接診察できるようになり、安堵しています。

第二、第三波の可能性もありますが?
宮城 沖縄県は観光収入が経済に大きく影響します。県外からの観光客が多く来てほしい反面、ウイルスの持ち込みによる感染者の発生、特に東京や県外からの感染者が沖縄に飛び火しないかを心配しています。現在の対策を継続しつつ、全職員への新型コロナ対策の周知をどうするか、患者さんにはソーシャルディスタンスを守りつつ、全人医療をどうするかが課題です。

オリブ山病院

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具志堅チャプレンの応答は以下の通り。
─月曜日から金曜日毎朝8時20分から御言葉と短いコメントと祈りを院内放送で1~2分ほど流しています。以前は朝の全体朝礼(部署長)のみで、チャプレンが交代で御言葉とコメントと祈りをもってのスタートでしたが、院内放送に切り替えたことでかえって広範囲に祈りが病院全体に届くようになりました。職員から「聞いていますよ。よかったです」「音声の関係で聞きづらかった」などのコメントも聞かれるようになりました。患者様から喜びの声もあり祈りの励ましとなっていることを感じます。
各病棟礼拝の対応は時短にし、マスク着用、距離を保ちつつ各病棟との調整や確認のもと行っています。訪室、部署の朝礼等の祈りも同様です。病棟礼拝ではマスク着用のため、声が聴きづらいとの意見もあり、拡声器などを使用して対応しています。
広い礼拝堂での職員礼拝に関しては、三密を避け、間隔を空けて、マスク着用などで対応。外部牧師等はしばらく控えていただきました。伝道連携室(チャプレン室)、A、Bとグループ分けをし、グループLINEなども活用しながら確認、申し送り場所を別にし、業務確認をしました。定期で出している800字ほどのキリスト教文書「愛だより」に、文書だけでなくQRコードなどで音声付きにするなどの工夫をしています。臨終対応とお見送り式も時短で対応しております。─
オリブ山病院のウェブサイトURL https://oribuyama.jp/