コロナ禍で問われる教育機関の存在意義 遠隔で生む知の可能性 宮添輝美さん(東京理科大准教授) 志学会「関東 第34回公開講演会から②

写真=講演スライドより、宮添さんの調査結果から

応用言語学、遠隔教育学が専門の宮添輝美さん(東京理科大学・理学部准教授)が学んだ国際基督教大学(ICU)は、キリスト教との出会いの場でもあった。志学会「関東第34回公開講演会」(2020年11月16日開催)より後半の内容を抜粋で届ける。 【高橋良知】
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聖書科の授業、国際基督教大学教会の牧師、また大学時代の同期や先輩の牧師の存在が大きい。洗礼は2014年だった。「当時、ある倫理的問題で苦しみ、大学の先輩でICU教会の牧師だった北原葉子先生(現西国分寺教会牧師)に相談した。先生から志学会も紹介され、かかわるようになりました」。現在同会の実行委員も務める。
実は、経済的理由で断念したものの、高校受験ではICU高校に合格していた。「ずっと見つめられ、見守り続けてもらい今があると感じる」と話した。
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続いて「遠隔教育学」について、日本の多くの大学でも導入されている学習管理システム「Moodle」を例に紹介した。
Moodleはオーストラリアのエンジニアのマーティン・ドゥーギアマスが2001年に開発したものだ。「今のオンライン授業は急に可能になったのでなく、20~30年かけて準備されてきました」。Moodleは無料公開されていて、個人でも運営可能。ビデオ講義配信、、教材提示、レポート回収・返却、ライブチャット、アンケートなどを実施できる。
従来、「教育的には二次的な手段」とみなされていたオンライン授業だが、たとえば英作文について、「量と質の点で向上が見られる」という研究成果なども紹介した。「教育工学界では対面が通信に比べて優位という前提はすでに覆されている。遠隔教育ならではの特性を生かして、対面とは異なる優位性を持たせることが可能になっています」
Moodle開発理念は、相互交流の中で知を構成するという「社会構成主義」の考え方に基づく。
「遠隔教育学の研究では、双方向で学ぶことに適する『関連認識』(CK)タイプと、独習が向いている『分離認識』(SK)タイプについての研究があり、CKタイプが社会構成主義の学びに適する。CKとSKには男女差も見られ、比較的CKに女性が多いことを、宮添さんは学生へのアンケートなどで確認している=写真=。「もちろんCKの男子も、SKの女子もいる。重要なことは、オンライン学習で女子の存在感が大きいこと。もともとオンライン以前の遠隔教育でも女性の学習者が圧倒的に多数でした」
遠隔教育は5世代にわたり展開してきた。それは①郵便、②ラジオ・テレビ、③公開大学、④テレビ会議、⑤インターネット、だ。「公開大学は日本では放送大学に当たるもの。アジアでは何百万人単位で拡大している」と言う。
自身が2000年代初頭にオンラインで学んだ、ロンドン大学教育大学院やカナダのアサバスカ大学の例を挙げて、「日本でもコロナ禍でオンラインの方法を模索しているが、他国には、20~30年先駆けた蓄積がある。先例に学びたい、、、、、、

(この後、遠隔教育の課題、教育機関に求められるものを語ります。2021年2月7日号掲載記事