「原発問題に関心持って」 映画「国民の選択」3月公開 宮本監督 映画で危険性訴え
東日本大震災による福島第一原子力発電所事故から10年目を迎えるが、最近は原発事故についてメディアは沈黙、原発反対の声も聞かれなくなったように見える。一方、菅義偉首相は昨年10月、2050年までに温室効果ガス排出「実質ゼロ」を宣言。CO2排出量の少ない原発を活用する意思もにじませた。そんな中、原発の危険性に警鐘を鳴らす映画「国民の選択」(宮本正樹監督)が、3月5日から東京・渋谷区のアップリンク渋谷で公開される。脚本も手掛けた宮本監督は「10年目にもう一回原発問題を掘り起こし、関心を持ってもらいたい。そして、日本に本当に原発が必要なのか否か、一人でも多くの人に考えてほしい」と、期待を込めた。
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舞台は原発が立地するある町。20XX年、国会で原発に反対する憲法が発議され、国民投票を実施することになった。それを受け、高橋家で家族会議が行われた。町議会議員の父は家族に原発賛成を強要。娘は父親に反発するが反論できず、大学の友人と原発について勉強することに。原発で働く息子は、婚約者との間に新しい命を授かると、賛成か反対かで揺れ動く。何となく原発を受け入れ、原発の恩恵にもあずってきた家族が、国民投票をきっかけに原発と向き合い始める。
映画では、原発行政に取り込まれた人々、 原発がなくてもエネルギーは足りていると主張する男性、放射性廃棄物は必ず無害化できると主張する科学オタクなど、原発にまつわるあらゆる状況、立場、考えの人たちが登場し、詳細なデータの裏付けも踏まえて意見を闘わせ、テンポよくストーリが展開。その上で物語は「原発反対」という結末へと導かれていく。
宮本監督は「この映画製作を始めた当初の目的は『原発を止めたい』だった。でも、今は『まず原発問題に関心を持って』という気持ちのほうが強い」と言う。「人々は原発よりコロナや東京五輪などに関心を向けている。その間、政府や東京電力は再稼働に向け、市町村の同意を取り続け動いている。世界では脱炭素、SDGsが盛んに言われているが、その背後にCO2を排出しない原発をもっと使いましょう、という動きがあるのでは、とも思っている」
この映画では「生まれて来る子どもを危険にさらしたくない」と、妊婦が訴える場面が登場する。「核物質はいのちの連鎖を断つ威力を持っている。だから、人間がいちばん使ってはいけないもの。結局はいのちの尊さにいきついた」と宮本監督。「政府や東電から『なんだ、この映画は!』と言ってくれたら成功ですね」と話した。
アップリンク渋谷での上映は3月18日まで。大阪、名古屋、茨城でも随時上映していく。問い合わせはTel03・5309・2570、ユナイテッドエンタテインメントへ。公式ウェブサイトURL https://www.kokumin-movie.com/