神に与えられた材料生かす 健康効果もある木材を身近に無駄なく 大工 新井宣道さん

神奈川県在住の新井宣道さんは、木にこだわってきた大工だ。
「木は一つ一つ癖がある。木目をそろえていったり、それぞれの特徴を生かして配置します」。

「今では『昔の職人だな』と言われる」と笑う。「今は効率化が進み、プレカットと言って工場で、あらかじめ加工された部材を大工がどんどんはめていくという方向になっている。確かに時間が短縮され、現場でゴミが出ないのはいい。ただ少しさみしいですね」

それでも、まだまだ木目や木材にこだわる場面はある。「出来上がりに違いはあまり感じられないかもしれないが、それをしないと、なんか気持ち悪い感じがあります」

そんな新井さんにとって、リフォームは学びの場だ。「昔の建物で、壁や天井を開けて、『ここまでやっているのか』という物件があると、襟(えり)が正される。たとえば建物全体の水平垂直がしっかりしていると感心する。今は、機械の進歩で簡単になったが昔は手間がかかった。自分が知らないやり方を教えられることもある。まず大工がしっかりしたものを作ると、続く塗装や、電気工事の人もしっかりやらなくては、となるものです」

写真=木製の家具

木の空間は、人々の健康にも良い影響を与える。木造とコンクリート住宅では寿命が9年違うという研究結果もあるという。「良い木材には調湿機能、殺菌・防虫機能があり、カビの発生を抑える。発散する成分にリラックス効果があります」。ただ木材ごとにその機能は違う。ある木材はシロアリに食われるが、ある木材は保たれているということもある。「杉はいいですね。加工していても、すっきりとした気分になる。同じ杉でも幹の中心部の赤い部分の防虫が強いようです」

木の性質についてこんなエピソードも話した。「知人が、あるお店の小上がりに上がったら、床が温かったので、床暖房だと思ったら、桐材だったといいます。木材は高く思われますが、床暖房も光熱費など意外とコストがかかってしまいます」

「敏感な人はきれいなマンションでも息苦しくなることがある。快適な住まいというのは、いろいろあると思うが、身体が弱い人の声に耳を傾けてみてはどうか。木造にできなくても、床や様々な部分に木材を使うなどがお勧めです」

耐震については、1981年、2000年に耐震基準が改正され、今の建築は基本的に耐震がしっかりしている。今は耐震に必要以上にこだわるよりは、ほかの快適な空間づくりに力を入れたほうがいい。土地の地盤には注意したい」とアドバイスする。

「意外と見過ごされがちなのは壁からの雨漏り」と、注意を促す。「雨漏りは天井からのイメージが強いと思うが、壁も手抜きがあると、中にカビができていたり、数年でボロボロになるということもある。建築するときは、壁についてしっかり調べておいたほうがいいです」

シックハウスやアスベストの教訓から学べるのは、新しい建築材には慎重になるということ。「アスベストは、安くて丈夫ということで、広がったが、様々な健康被害が広がり、今は使用が全面禁止になった。メーカーも新建材をしっかり検証していると思うが、売り出すときは良い部分だけ強調しがちだ。冷静に様子を見たい」と話した。
建築現場で課題に感じるのは、過剰な建材とゴミの発生だ。

「以前ある会社の仕事を一度請け負った時に、必要以上に建材が運ばれたりするのを目の当たりにした。細かに必要な数をそろえるのは手間がかかるようだ。必要以上来ても、戻すのにまた運搬コストがかかるので、結局廃棄するということになる。これは現場の一大工ではどうにもしがたい。お客さん、企業の意識改革が必要。神様から与えられている材料を無駄なく使っていきたい」


所属する改革派・横浜中央教会の増築では、建設委員会の委員長を務めると同時に、現場では大工として働いた。「発注側でもあり、現場の立場でもあるという独特の立ち位置だった。しかし、そのことで仕事仲間にクリスチャンであることをより分かってもらえたと思う。教会においても、教会員との間にいさかいがあったら、その相手は礼拝堂で礼拝するたびに思い出してつまずきになるだろうと思い、身が引き締まりました」

クリスチャンホームに生まれたが、「束縛」を感じて、青年時代には教会を離れた。「姉が伝道集会の説教要旨をくれたり、家族が祈ってくれた。教会に戻った時は『もう離れられない』と頑張っていたが、だんだん自分の努力でやるのではなく、すべて恵みなのだと気づかされ、平安を得ています」

建築特集 ステイホーム(家で過ごす)時代の安心と温もり