神学 コロナ禍での「集まり」再考 初代教会の家族共同体が示す愛と善行

3・11東日本大震災から10年。震災直後に「災害復興支援SBSネットワーク」を立ち上げて主体的な活動をしてきた仙台バプテスト神学校(仙台市青葉区)で、当時校長を務めていた森谷正志氏は、教会のあり方、クリスチャンの社会性と宣教のあり方に再考を迫られたという。同神学校では折しも2000年頃から、教会主体の神学教育(C-BTE)へとパラダイム転換を図っていた。そうした経験を踏まえこのほど出版した『教会・神学校に迫られるパラダイムの転換』の中で森谷氏は、教会の集まりについて新型コロナウイルス禍において再考を迫られていると指摘した。同書からその部分の概要を紹介する。

森谷 正志
(もりや・まさし)
保守バプテスト教会牧師、仙台バプテスト神学校舎監・教師・校長を歴任。現在C-BTEジャパン代表、牧会メンターとして牧会支援

危機の中、神が意図する「共に集まる」とは?

「新型コロナウイルス感染」の急速な広がりの中で、私たちの日常生活、その行動様式に大きな変化が起こっています。教会も例外ではありません。こうした危機的な状況の中で教会の集まり方が感染の広がりを助長してしまう危険性があれば、それは絶対に避けるべきだ、ということは言うまでもありません。と同時に、こうした現実を直視しつつ、むしろこのような状況であればこそ、あるべき神の家族である教会の集まりについて再考してみる良い機会であると思います。神の意図する「共に集まる」ことの原則、その目的、意義、そして今日的課題を共に考え、新たな「教会の集まり」を創出できればと願っています。

ヘブル人への手紙10章22~25節に注目してください。「心に血が振りかけられて、邪悪な良心をきよめられ、からだをきよい水で洗われ、全き信仰をもって真心から神に近づこうではありませんか。約束してくださった方は真実な方ですから、私たちは動揺しないで、しっかりと希望を告白し続けようではありませんか。また、愛と善行を促すために、互いに注意を払おうではありませんか。ある人たちの習慣に倣って自分たちの集まりをやめたりせず、むしろ励まし合いましょう。その日が近づいていることが分かっているのですから、ますます励もうではありませんか。」

多くの場合、24節「ある人たちの習慣に倣って自分たちの集まりをやめたりせず」との警告の節にのみ注目して「主日礼拝厳守」がクリスチャン生活の核心部分となっているのがプロテスタント、とりわけ福音派の伝統でもあります。もちろんそれだけでなく「十戒」の第四戒「安息日規定」の今日的適用も「聖日厳守」の伝統を作り上げています。それゆえ主日礼拝を守るために家族、とりわけ未信者である家族、両親や伴侶、あるいは職場の人たちとの戦い、葛藤を乗り越えて礼拝出席を守ってきた方々もおられるに違いありません。

教会の外でも 福音に基づく「良いわざ」を生きる

率先して「良いわざ」に

注目すべきは「自分たちの集まりをやめたりせず」の集まりの内容です。すなわちそこに至る文脈は「全き信仰をもって、……しっかりと希望を告白し続け……互いに注意を払い、愛と善行を促す」集まりへと一体化した文脈です。

(この後森谷氏は、集まることの本質として「愛と善行」、福音に基づく「良いわざ」に注視します。2021年4月18日号掲載記事

 

聖書に戻って教会の課題再考

『パラダイムの転換』
読者が著者と読書会

『教会・神学校に迫られるパラダイムの転換』を一読して感動した大頭(おおず)眞一氏(日本イエス・キリスト教団明野キリスト教会牧師、焚き火を囲む仲間たちの会主宰)の呼びかけでZoomによる同書の読者会が始まった。

初回4月6日には十数人の牧師・信徒らが参加し、「はじめに」を読んで著者の森谷正志氏から問題意識の背景や教会・神学校のあり方のパラダイムを転換した動機を聞くなど、著者を交えた読書会ならではの深掘りの機会となった。

教会の高齢化が進む中で信仰が次世代へと継承されてこなかった原因はどこにあるのか、組織神学主体の神学教育から聖書に戻って再考する必要、聖書が教える「神の家族教会共同体」の建て上げとは違う宗教集団になってはいないかなど、著者の問題意識に共感する声や、自らの経験を分かち合う機会ともなった。

次回は4月27日(火)午後3時〜4時30分、著者が再考を迫られた教会主体の聖書神学的な神学教育との出会いや、東日本大震災での経験などを中心に序章から学ぶ。

以後は参加者らが各章を読んだレスポンスをし、著者や参加者どうしと対話しながら10回にわたって進める予定。第3回以降は5月4日、18日、6月1日、15日、7月6日、いずれも火曜日15時から。参加者は同書を読んで来ることが条件。参加希望者は世話役の大頭氏にメールで申し込みを。
Mail:gospel.ozu2@gmail.com