難民申請3回以降は強制送還が可能に 問題だらけの入管法改正案 構造的問題解決の祈りを 寄稿:宮島牧人 日本基督教団原町田教会牧師

政府は、出入国管理及び難民認定法(入管法)改正案を、2月19日に閣議決定した。だが、同改正案は、難民申請の回数を制限する項目を盛り込んだり、仮放免者が刑罰の対象となった場合、監理人としての支援者も罰せられる監理措置という制度が設けられるなど問題点が多い。長年、入管収容者の面会をしてきた宮島牧人氏(日基教団点原町田教会牧師)に、その問題点について寄稿してもらった。

私は2009年から入管に収容されている人たちとの面会を始めました。入管の面会に行くようになったのは、ある牧師が私に告げた次の御言葉にあります。「『旅人をしていたときに宿を貸し、牢にいたとき訪ねてくれたのは、わたしにしてくれたことだ』(マタイ25章34~40節参照)とイエスが言っているが、入管では旅人の外国人が牢のようなところに入れられている」
入管で面会を重ねるごとにそこに収容されている人たち、特に難民申請者がとても苦しんでいることを知ります。刑務所には刑期がありますが、入管には期限はありません。いつ出られるかわかりませんから、出口の見えない真っ暗なトンネルの中にいるような苦しみを味わっています。いつ強制送還されるか分からないという不安で精神的に追い込まれる人もいます。難民申請をしているのは、政治や宗教上の理由、あるいは性的指向などで国に帰ると迫害を受け、命に危険が及ぶ人たちです。私が面会し、出会ったあるウガンダ人の男性は、反政府組織に拉致されて、強制的にメンバーとさせられました。彼は政府軍に逮捕されて拷問を受け、家族も政府軍に殺されて命からがら日本に逃げてきました。
入管収容での生活には自由がほとんどありません。部屋はすべて相部屋でトイレとテレビ、洗面所だけがあって、多い時には12畳に7、8人が寝泊まりしています。1日の大半(18時間)をこの部屋で過ごし、部屋から出ることができるのは9時の点呼から12時の昼食までと、部屋で昼食を取った後の3時間ほどに限られています。
それも建物の外に出ることは許されず、部屋と部屋をつなぐ廊下、シャワー室、洗濯室、運動施設など限られた場所にしか移動はできません。携帯電話もパソコンも使えず、外部との接触は電話か手紙、あるいは面会のみとなっています。しかもその電話は外からかけることができず、被収容者が決められた時間内にテレホンカードを使ってかけることしかできないのです。
入管収容所から出るための方法として「仮放免」という制度があり、いくつかの条件が整えばそれを申請し許可されて、ようやく一時的ではありますが外に出ることができます。私はこれまでに200人を超える人たちの身元保証人を引き受けてきました。仮放免を申請して結果が出るまでに最低でも2か月もの時間を要しますが、それでも何回目かの申請で許可され、そのことを私が面会した際に本人に向かって「仮放免がOKになったよ」と伝えますと、涙を流して喜んでくれる人もいますし、大きな声で喜びを表す人もいます。面会支援をしていてうれしい瞬間でもあります。
しかし、18年になって仮放免許可がほとんど出なくなり、収容期間がより長期化することになりました。2、3年、長い人では5年もの間、一歩も外に出られずに閉じ込められています。仮放免がほとんど許可されないことに対しての抗議として、収容所内の人たちの多くがハンガーストライキを始めたのも18年から19年のことでした。そして、1人のナイジェリア人男性がハンストで餓死する事件が起こります。
21年4月現在、国会では入管法改正案が審議されていますが、それはその事故をきっかけに始められた国の専門部会が、20年6月に入管法改正案として提言したものです。長期収容を解消するため打ち出されたのですが、この改正案にはいくつもの問題があります。
日本の難民認定率は、19年が0・4%でした。ほとんど0%に近い数字です。アメリカやカナダ、ドイツなどと比べても格段に低い難民認定の人数ですから、日本では難民と認められるまで何度も難民申請を繰り返す人が多くいます。自分の国に帰ると迫害の恐れがありますから、当然「自分を難民と認めて欲しい」と申請するのです。これまでは難民として認められるまでに何度も申請でき、また申請中は強制送還されることはありませんでした。
しかし、今回の改正案では3回目の申請以降、強制送還することが可能となるのです。これは明らかに難民条約違反ですし、何よりも難民申請者の生死にかかわる問題を引き起こしかねません。
また、「監理措置」という新しい制度も問題です。現行の仮放免には、仕事をしてはいけないとか1、2か月に1度は入管に出頭することなど規則があって、それを守れなかった場合には保証金の一部没収であったり、再収容されるなどのペナルティーがありました。
しかし、監理措置では、仕事をした場合には刑罰の対象となること、また監理人(仮放免の保証人のような立場)にも罰金が科せられるのです。つまり難民申請をしている人たちがより厳しく管理、監視されることになるのです。事情があって母国に帰りたくても帰ることができない人たちの生きる権利を守るのは、社会として当然のことです。しかし、この改正案を見ますと現実はその反対に進んでいるのです。
クリスチャンであれば、聖書が繰り返し語る「寄留者(難民のような人たち)を助けなさい」との御言葉を自分に告げられたものとして受け止めます。良きサマリア人のように、困っている人、苦しんでいる人がいたら、駆けつけて助ける。イエス様がわたしたちにそうしなさいと言われたことだからです。
寄留しなければならない状態に追い込まれている人たちを苦しめるような、構造的な問題が解決しますように、と祈ってください。