共産圏・中国内外で教会は? 「竹のカーテン」の中で進む宣教追う

特集 あの記事が今につながる

クリスチャン新聞は、創刊以来50年にわたり、教会生活にかかわる様々な話題を取り上げ、記事にしてきた。その多くは時々の話題として紙面を飾ったが、中には、小さな記事として初めは掲載されながら後に大きな働きにつながったもの、クリスチャン新聞が意識的に継続して追いかけてきたものも少なくない。そんな「今につながる」記事を取り上げ、この50年を振り返る。

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本紙は創刊当初から、門戸が開かれる前の共産圏下にある中国での宣教について報道してきた。家の教会の存在と活動についても、いち早く伝えてきた。
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共産国・中国は、建国後20年以上にわたって「竹のカーテン」で外部との接触に厳しい制限を設けていた。日本も例外ではなく、日本から中国へ観光旅行が可能になったのは、1978年に日中和親平和条約が締結された後のことだった。しかし、中国の門戸が開かれる前から、将来の中国宣教に備えていた宣教団体はあった。その一つが、オランダに本部があった「オープンドアーズ」である。総裁のブラザー・アンドリュー氏は、戦前、オランダに侵攻したナチス・ドイツに対し抵抗運動をし、戦後、苦難の中の教会を助けることを目的に、「オープン・ドアーズ」を設立、共産圏やイスラム圏、また北朝鮮やアルバニアなどの無神論国家に対しても宣教の働きを秘密裏に行っていた。

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1975年、フィリピンのマニラで「ラブ・チャイナ」という国際会議オープン・ドアーズの主催で開かれた。この会議は、やがて、中国の門戸が開かれた時に備えることを目的に開かれ、具体的には、中国語の聖書百万冊を中国の家の教会に届けようという計画が提案された。この会議には、日本からも教職、信徒十数人が参加、筆者もクリスチャン新聞記者として取材のため同行した。

この会議の中で、個人的に、筆者に強く迫ってきた出来事が2つあった。1つは、アンドリュー氏のメッセージである。こう訴えた。

「われわれ自由圏に住むクリスチャンは、なぜ、私たちに自由が与えられているかを考えて欲しい。今、世界には50億(1975年当時)の人々がいるが、その半数の人々は、共産圏やイスラム圏などキリスト教を迫害する国に住んでいる。しかし、その苦難の中に生きるクリスチャンは、キリストの体なる教会に属する主にある兄弟姉妹なのだ。体は一部分が痛めば全身が痛む。自由圏に住むクリスチャンが、痛んでいる兄弟姉妹の痛みを感じないでいられるだろうか」

「ラブ・チャイナ」の会議で、筆者がショックを受けたもう一つの出来事は、日本軍のアジア侵略にまつわる出来事だった。会議が休みの時間のことだった。日本から一緒にマニラに来ていたアメリカ人女性宣教師が、泣きながら私の元に走って来た。

「どうしました?」。

私の質問に、女性宣教師が答えた。

会議に出ていたフィリピン人クリスチャン女性と出会った時のこと、その女性は、日本からクリスチャンが会議に来ていることを知ると、「私の父と母は日本軍兵士に殺されました。私はクリスチャンですが、日本人をどうしても赦せないのです」と抗議したという。

この話を聞いた日本からの参加者のリーダーが、「この問題をこのままにしてはいけない」と、全体会議の前に、800人を超える会衆に訴えた。

「みなさん、私たちは日本から来たクリスチャンです。日本はかつてアジアの国々を侵略し、多くの人々の命を奪いました。そんな、日本の教会が、どのように中国宣教の重荷を担うことができるのか、どうか日本の教会のために祈っていただけないでしょうか」。

翌日、日本のために特別に祈る祈祷会には、200人以上の世界各国の参加者が集まってくれたのである。

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「ラブ・チャイナ」におけるチャレンジは、日本からの参加者にも、大きな影響を与え、後に、中国への宣教師として立ち上がった人も起こされ、翌年には、福音派の教会が中心になり「中国宣教会議」が静岡県の天城山荘で開かれた。

クリスチャン新聞では、この「ラブ・チャイナ」への参加を機に、中国大陸の共産化以後の、キリスト教会の状況を取材。1980年(※1979年06月24日号)に、「中国宣教の鼓動」という連載を開始、苦難の中で伝道を続ける家の教会(当時は、地下教会と呼ぶ人々もいた)への中国語聖書の贈呈運動を啓発していった。その結果、1979年には、「オープン・ドア―ズ」日本事務局が開設され、日本人クリスチャンが観光客として中国を訪れ、持参した中国語聖書を家の教会の人々に届けるという働きが始まり、それは、1982年から「いのちの水・計画」に受け継がれ、現在に至っている。

英国の教会指導者の一人であったジョン・ストット氏は、生前、中国の教会の歴史について言及し、「今、中国の教会で起こっていることは、もしかして、キリスト教2千年の歴史の中で、最も大きな出来事の一つかも知れない」といった意味の発言をしている。

なぜ、それほど大きな出来事なのか? それは、1949年10月1日、中華人民共和国建国以来、キリスト教は厳しい政府の管理の下に置かれ、伝道の自由も奪われたにもかかわらず、この70年間におそらく世界でも最も多くのキリスト教徒を生み出した事実があるからだ。具体的には、1949年当時、70万人余りだったクリスチャン人口が、60年後には1億人を超える信者数になっているという報告もある。

クリスチャン新聞としては今後も、この中国で起こっている驚くべきリバイバルの状況を、現地取材を中心に続けていく所存である。【守部喜雅】

50周年記念関連記事リストはこちら→ クリスチャン新聞50周年記念号記事を再掲載

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クリスチャン新聞は、1967年5月にそれまで月刊で発行されていた『福音ジャーナル』を母体に創刊し、日曜礼拝を中心とするクリスチャンの生活サイクルに合わせ、同年11月からは週刊で発行してきました。

50周年を迎えた2017年には、4回の特集、2回の記念集会を実施しました。改めてこの50余年の報道の歴史を通して、戦後の諸教会の宣教の一端をご覧いただければ幸いです。

※毎週火曜、土曜に本オンラインで掲載します

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