連載から名画紹介図書へ バイブル アンド アート ミニストリーズ 生活のあらゆる領域に神の主権を

 クリスチャン新聞では、1995年4月に設立されたバイブル・アンド・アートミニストリーズ(B&A=町田俊之代表)の活動を、設立当初から報道してきた。日本における福音宣教はそれまで、大挙伝道に象徴される直接伝道が主だったが、90年代頃からアプローチも多様化していった時代。美術による宣教を模索するB&Aは、その代表的なものの一つだ。クリスチャン新聞はB&Aをはじめ、あらゆる領域における宣教の働きを記事、連載などで取り上げてきた。19951105町田俊之氏
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B&Aは、聖書信仰と美術の関わりを神学的に探求し、美術による宣教を模索する、クリスチャン・アーティストを中心としたムーブメントで、デザイナーから牧師に転身した町田さんが、11年続けた牧師職を辞して設立した。
町田さんは美大在学中に入信。プロテスタント教会の会堂の中で信仰告白をした瞬間に「神様は美術に関心がない?」と肌で感じた経験が、B&Aの原点となった。

「美術は神様とどう関係あるんだろう」
デザイン事務所を辞め、神学校を卒業して牧会に携わる中で、同じ悩みを抱えるクリスチャン・アーティストたちに出会った。やがて、「聖書で美術はどう扱われているか」を定期的に学ぶ、有志による聖書研究会が始まった。天地創造のほか、契約の箱や至聖所での祭祀に使われる道具類の形状を神が詳細に指示している聖書個所などに目が留まった。

B&A設立と同時に、東京基督教大学共立基督教研究所で研鑽を積み、「生活のあらゆる領域に神の主権を認める」キリスト教世界観と、「キリスト者の社会的責任」を確認したローザンヌ誓約(74年)に確信を深めた。町田さんは、本紙「焦点」(95年11月5日号)に寄稿し、「キリスト者の社会的責任の一環として、教会には神中心の文化を創造する責任がある」と呼び掛けている=写真左下=。翌年の96年11月3日号では、記事としてB&Aの働きを紹介している=写真上=。

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1年後、本紙では、町田さんをコメンテイターとして、開催中の美術展の主要な展示品を、聖書信仰の視点から解説する連載「美術散歩」(96年5月5日号から97年4月6日号まで。月1回連載)を掲載=写真上=。クリスチャン作家を紹介し、日本で人気の高い西洋美術の傑作の数々に、信仰者としての解釈を提案した。この試みは結果的に、『アートバイブル』(日本聖書協会発行、03年)、『巨匠が描いた聖書』(いのちのことば社、09年)など、聖書を題材にした名画を紹介する図書の出版(町田さんが監修・解説を担当)につながった。さらに、講演会やヨーロッパの美術館などを巡るスタディ・ツアーなど、名画を通して聖書のメッセージを伝える機会が開かれた。

98年にはB&A主催で、絵画・デザイン・建築・造形など各分野のクリスチャン・アーティスト、哲学者、神学者ら6人をパネリストに、クリスチャン美術シンポジウム(東京・御茶ノ水)を開催、各パネリストの実践と提言が紹介された。福音派としては初の試みだったが、予想をはるかに上回る170人が参加。「“よくぞやってくれた”という思いを参加者から感じた。潜在的に、自分と同じ疑問を持つ人は多いと感じた」。町田さんは、そう振り返る。

キリスト者の社会的責任として、「神主権の美術を創造する」「神のもとに美術を回復する」B&Aの試みは、日本伝道会議(2000年)国際聖書フォーラム(06年)でも取り上げられた。

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その間、町田さんは全国の地域教会や神学校を訪問し、B&Aの働きを伝えた。アーティストのネットワークも少しずつ広がり、日韓クリスチャン・アーティスト交流展覧会(2010年)も開催、東日本大震災後は、幼稚園の壁画制作など、アーティストならではの被災地支援に、今も継続して携わっている。
町田さんは8年前から青山学院大学で非常勤講師として教えている。今、担当しているのは「宗教史」と「キリスト教美術」だ。『アートバイブル』出版がきっかけで、同大学に招かれた。
「何冊か出版したが、自分から本を出そうと思ったことは一度も無い。まして大学で話をするなんて、考えてもいなかったけれど、自分が大学時代に疑問を感じたことを、今の学生たちに語る。自分にとって集大成です」。8年前は13人だった「宗教史」の受講生が、今や240人を数える。
B&Aの働きは知られてはきたものの「教会の意識は、それほど変わっていない」とも。

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「結局、美術は賜物の一つ。どんな賜物であれ、この世では、競争で効率良く役に立つものだが、キリスト教の場合は、神に繋がり、人に仕えるための手段。相手によっては自分の賜物を隠して、仕える場合があるように、賜物は愛を働かせる目的のために与えられているもの」。「教会は賜物を用いましょうと言うけど、賜物を通して、神様をもっと知りましょうとは言わない。教会の意識改革が必要だと思います」

「あらゆる領域に神の主権がある」。1974年ローザンヌ世界キリスト教会議で採択された宣言だ。あれから43年──日本でも美術を初め、教育、福祉、スポーツ、古典芸能、映画など、かつてない領域で文化創造の動きは広がりつつある。「文化を用いた宣教」も、日本の教会の中に浸透しつつある。
本紙は、報道を通して、その実践神学の試みの一端を担い続けたい。
【中田有紀】

50周年記念関連記事リストはこちら→ クリスチャン新聞50周年記念号記事を再掲載

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クリスチャン新聞は、1967年5月にそれまで月刊で発行されていた『福音ジャーナル』を母体に創刊し、日曜礼拝を中心とするクリスチャンの生活サイクルに合わせ、同年11月からは週刊で発行してきました。

50周年を迎えた2017年には、4回の特集、2回の記念集会を実施しました。改めてこの50余年の報道の歴史を通して、戦後の諸教会の宣教の一端をご覧いただければ幸いです。

※毎週火曜、土曜に本オンラインで掲載します

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