アラブ、イスラエルに架け橋を 緊急祈祷
イスラエル、パレスチナの衝突が拡大し、国際的な緊張感が高まる中、イスラエル情報を発信しているキリスト教団体「シオンの架け橋」の定期集会で、5月16日に緊急の祈祷課題が挙げられた。衝突の収束とともにイスラエル、アラブの人々双方の平和のために祈った。
エルサレム在住のレポーターによると、2019年ころからイスラエルでは右派、左派が内部分裂するという内政混乱の背景があった。一方パレスチナ自治区では、5月に予定されていた総選挙が延期となり、議会で勢力が拡大する見込みだった武装組織ハマスが武力闘争に活動を転換していた。
4月にはイスラム教徒のラマダンにとって重要な場所となるダマスカス門をイスラエル警察がコロナ禍を理由に閉鎖し、反発が起きた。アラブ人が超正統派ユダヤ人を暴行する映像がSNSに流れるなどした。一方イスラエル極右議員の扇動で東エルサレム土地所有権・立ち退き問題も再燃する。
この緊張状態の中、5月9日の「エルサレムの日」のパレードでアラブ人と衝突が起き、10日にハマスがエルサレム側にロケット発弾、これへの報復としてイスラエルはパレスチナ自治区ガザを空爆した。「ハマスはイスラエルの報復を想定してロケットを着弾させたとみられます」
イスラエル国内で問題になっているのはユダヤ系市民、アラブ系市民の衝突。「アラブ人のリンチに対して、ユダヤ人の過激派もリンチで報復してしまった。もともと国内のユダヤ系市民、アラブ系市民は微妙なバランスで共存を続けてきた。ハマスとの衝突はやがて収束するだろう。しかし『共存の再構築には10年はかかる』という人もいる。内部からの再燃という意味では第三次インティファーダ(1987、2000年に発生)になるのではと心配だ。国内でも『平等、倫理を大事にする法治国家としてのイメージに泥が塗られ、イスラエルは市民への無差別攻撃というやり方でハマスに成り下がってしまった』という声もある」と懸念した。
このような中、平和的なメッセージを発信している市民たちもいる。イスラエル・ハイファのランバン病院では、アラブ人とユダヤ人の医療従事者たちが「私たちはコロナに打ち勝った。今回も一つになって乗り越えよう」と語り、ヘブライ語、アラビア語で「平和を意味する「シャローム」「サラーム」のメッセージボードを掲げた。
レポーターは「闇の中に光がもたらされるように。イスラエルを愛するキリスト者はとりなしの祈りをしてほしい」と勧めた。
ユダヤ人がユダヤ人としてイェシュア(イエス)を礼拝するための働き「ネティブヤ」設立者のヨセフ・シュラム氏は「日本で起きた最後の戦争は76年前だが、イスラエルの最後の戦争は去年。これまで多くの戦争があり、ガザの戦争も歴史があった。それはアブラハム、イサク、ヤコブの神との契約を信じる者たちとそうではない者たちとのたたかいと言えるかもしれない。最終的には神様が選ばれた者が戦争に勝つと信じている。イスラエルのために祈ってほしい」と話した。
一方「アラブの友人たちのためにも祈ってほしい」とも語った。「多くのアラブ人がイスラエルに住むことで幸福を得てきた。パレスチナから働きに来て、家族を支えているという現実もある。現在私が住んでいる家は、数十年前に信仰に導いたパレスチナの友人が贈ってくれた。同じイェシュア(イエス)を信じる者だ。国籍によってではなく、イェシュアの血によって兄弟姉妹となりました」
「アラブ世界のためにも祈ってほしい」と言う。「お互いアブラハムの子であり、兄弟姉妹、親戚どうしだ。政治的な影響は大きいが、共に神の御言葉に立って祈る姿勢でいたい。これは天に向かって肯定的な影響を与え、平和を与えます」
応答の祈りで、「シオンの架け橋」
代表の石井田直ニさんは「本当の平和はメシアがいなければ訪れない。まず戦争が収まり、流血がないように双方に悔い改めのチャンスがあるように、主にある兄弟姉妹が反目することがないように、呪いの連鎖を断ち切り、平和のサイクルをもたらされるように。福音のメッセージだけが敵を兄弟に変える。その力を表してください」と祈った。
集会のテーマは「ユダヤの祭シャブオットー旧約聖書から見たペンテコステ」。新約時代のペンテコステの背景となる旧約時代の祭の内容と継承について解説があった。集会の詳細は紙面で