【神学】示唆に富む生涯完走の備え 『牧師のレジリエンス 』ジョン・ヒューレット著 評・播義也

本書を読み終わり、コロナ禍において時宜にかなった出版を主に感謝した。
コロナ禍において必要な資質は、レジリエンスだという。「レジリエンスとは、本質的に難しい局面をうまく乗り越えて新しい環境においてやり遂げる能力です」と本書では定義している。コロナパンデミックで世界が一変し、教会も難しい局面にさらされているが、牧師のレジリエンスが生み出される具体的な視座を与えてくれる一冊である。

著者も訳者も、そして私もランニングを日課としているが、身をもっての体験から牧師の一生涯をマラソンに例え、今自分がどこにいるのか、完走するためにどのような視点や習慣が必要なのか、そして完走して次のランナーにタスキをつないでいくための具体的な備えはどうするかなど、示唆に富んだ内容となっている。本書で取り扱っている、アンコールキャリアと呼ぶ、牧師の退職に向けた具体的なアドバイスは、他に類を見ないと思う。

個人的なことで恐縮だが、私は著者から牧会のバトンを引き継いだものだ。引き継いだ当初は教会も混乱しており、去っていくメンバーも多くいた。しかしその間も著者とは同労者として正直に分かち合い、駆け出しの牧師の私はずいぶん励まされた。その後、主の恵みに支えられ、今も同じ教会で牧会する恵みにあずかっているが、著者が赤裸々にその当時の自身のことを分かち合っている姿に、私自身深い慰めを受けた。私も50歳を前にした主の働き人として、このタイミングで本書に出会えたことを、うれしく思う。どの世代の主の働き人も、またその働き人を支える教会のリーダーの兄姉にも、ぜひ手に取って読んでほしい一冊である。
評・播義也=恵泉キリスト教会埼京のぞみチャペル牧師、アジアンアクセスジャパン ナショナルディレクター

『牧師のレジリエンス 逆境でも燃え尽きない再起力』ジョン・ヒューレット 著 植木象平 訳