連載〝紅の百年”と日中宣教の今後③ 信仰がなくならないように祈って 寄稿 守部喜雅(クリスチャン新聞顧問)

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中国共産党成立100年を迎え、中国共産党とキリスト教会、日本の関係を振り返る連載3回目。中国宣教を取材してきた守部喜雅氏(クリスチャン新聞顧問)が寄稿した。

第一回→ 戦前から日本の教会は関与 松谷嘩介さん(金城学院大学宗教主事)

第二回→ 宣教の恩恵とたくましさに学ぶ 寄稿 中村敏(新潟聖書学院教師)
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キリスト教二千年の歴史の中で、最も大きな出来事の一つかも知れない

英国の教会指導者の一人であったジョン・ストット氏は、生前、中国の教会の歴史について言及し「今、中国の教会で起こっていることは、もしかして、キリスト教二千年の歴史の中で、最も大きな出来事の一つかも知れない」と言いました。

なぜ、それほど大きな出来事なのか?それは、1949年10月1日、共産主義国家・中華人民共和国が建国以来、キリスト教は厳しい政府の管理下に置かれ、伝道の自由も奪われたにもかかわらず、この70年間におそらく世界で最も多くのキリスト教徒を生み出した事実があるからです。49年当時70万人余りだったクリスチャン人口が、60年後には、一億を超える信者数になっているという報告もあります。

中国のキリスト教会は、プロテスタントでは、政府公認教会である「三自愛国教会」、非公認で独自の歩みを続ける「家の教会」、そして、カトリック教会があります。10年前の統計では、政府公認教会が約三千万人、家の教会が六千万人、カトリック教会が一千万人となっていましたが、現在は、それがさらに増えている可能性があります。

 

政府公認教会と反革命分子たち

時を建国当時に戻してみます。51年、中国共産党政府は宗教政策を打ち出し、当時あったすべての教会に対し、政府公認教会に加わるように布告を出しました。その結果、90%以上のキリスト教会は、やむなく、三自愛国教会に加盟することになりましたが、信仰の問題に共産党が関与することを良しとしないキリスト教徒たちはそこに加わらず、独自の信仰者の群れを形成する道を選んだのです。それが「家の教会」です。また、当時、中国全土で六千人もの海外宣教師が活動していましたが、51年までにその99%が国外退去となっています。

しかし、政府公認教会の教会に加わらないことは、政府側から見れば、反革命分子と見なされます。しばらくは、政府も静観する態度を取りましたが、56年から家の教会への弾圧が本格化し、約千人の牧師や伝道者が反革命分子の罪状で逮捕され、その多くが20年以上の労働改造所送りとなりました。

65年から69年に起こった文化大革命では、毛沢東の神格化が起こり、労働者は働きに出る前に各家庭にあった毛沢東の肖像画に手を合わせたと言います。
この時代には一千万以上の中国人が命を奪われたと言われ、クリスチャンも五万人以上がこの革命で犠牲になったという報告もあります。竹のカーテンが中国に関する情報をシャットダウンする中、香港の歴史学者は「ほどなく、中国からキリスト教は消え去っていく」との論文を発表したのです。

 

使徒行伝のような奇跡から聖書による養いへ

しかし、この文化大革命の時期こそ、家の教会が、そのいのちを証ししたのです。
中国南部の町で、二人の若い女性信徒が秘かに集まり、苦難の中にある人々のため祈り続けていました。ある日、取り締まりのため公安のリーダーとその部下が、その家をのぞいいていると、その女性信徒は病にかかった人々の為祈っていたのです。公安のリーダーはその光景をしばらく見ていましたが、取り締まることなく、そのままそこを離れたのです。

翌日、今度は、リーダーだけがその家を訪ねます。驚く姉妹たちに「昨日、あなたたちは病気の人のために祈っていましたね。実は、私の妻はがんで苦しんでいます。妻のために祈っていただけませんか」。姉妹たちは心を込めてそのリーダーの妻の病の癒やしを祈りました。この地方で千人もの人々が集まる家の教会は、この妻の癒やしを体験した公安局のリーダーが共産党を離れ、伝道者として立ち上がったあかしから生まれたのです。

家の教会の長老牧師の一人がこんなことを言っていました。「1970年代には、使徒行伝のような奇跡のあかしが次々と起こりました。しかし、80年代、家の教会に海外から聖書が届けられるようになってからは、中国の家の教会はみ言葉によって整えられ成長していったのです」

 

「共産党支配がなくなるとか、迫害がなくなるとか祈る必要はありません」

2014年4月、浙江省の温州市にあった三自愛国教会の一つ「三江プロテスタント教会」で突然、十字架の撤去と教会堂取り壊しが始まったというニュースが日本でもテレビで放映されました。非公認の教会が弾圧を受けるならまだしも、公認教会がこんなひどい仕打ち受けたわけですから、習近平国家主席のキリスト教弾圧政策の始まりと捉らえる人もいました。

事実、それ以後中国全土で、二千を超える公認教会でそのような弾圧があったと報じられています。現在、中国の共産党員は9千200万人、クリスチャンの数はそれを上回る、一億以上と言われています。

クリスチャンは共産党支配をどう考えているのか。一人の伝道者の言葉が忘れられません。「共産党支配がなくなるとか、迫害がなくなるとか祈る必要はありません。そうではなく、どんな状況の中でも、私たちの信仰がなくならないように祈ってください」。(つづく)
次回は近年の状況です。