遠州栄光教会・静聴寮 仕える人を育てるのは教会の務め 信徒の遺贈跡地を学寮に 「家族みたいに親しく接してくれる」

静聴寮外観

「聖なる神の奴隷として神と人とに仕えよう」と、創設者・長谷川保により始まった〝聖隷〟事業。日本基督教団遠州栄光教会(星野健牧師)は、その〝聖隷〟の働きを生み出してきた信仰を受け継ぐ教会だ。同教会は、教会員の宮津智加代さんが遺贈した土地に女子学生寮「静聴寮」を2019年に設立。教会が静聴寮の管理運営も担う。寮には看護師、介護福祉士、保健師、作業療法士などを志す聖隷クリストファー大学の学生たちが共同生活を送っている。

年明け間もない1月初旬、静岡県浜松市北区三方原町にある静聴寮を訪れた。静聴寮は、遠州栄光教会、聖隷三方原病院、障がい者施設「聖隷更生園」、聖隷クリストファー大学、聖隷クリストファー中・高等学校と、聖隷グループが運営する福祉施設、教育施設などが立ち並ぶ一画にあった。

毎月1回行われるリラの会で。聖書の話に耳を傾ける寮生ら

その日の夜は、月1回行われる寮生の聖書の学び会「リラの会」が行われる日。寮には寮生の部屋とは別にシェアルームがあり、そこで食事をしたり、集会を持ったり、寮生同士が交流する場所でもある。その日の夕食は、寮生が心を込めて作ったおでん。だが、コロナ禍のため、各自、黙って食事を済ませる。その後、テーブルを囲んで会が始まった。
3年生の寮長が司会進行し、みんなで韓国のゴスペルソング「きみは愛されるため生まれた」を歌った後、詩篇96篇を輪読。この個所から寮監で聖隷クリストファー大学教授の太田雅子さんがメッセージ。「『新しい歌』とは、気持ちを新たにするという意味。試験が控えていて『大丈夫かな?』と不安になったり希望が持てないような時でも、もう一度神様が祝福し、気持ちを新たにしてくださる」と、特に国家試験を控えている4年生を励ました。

ダイニングキッチン付きのシェアルーム

続いて誕生会。1月生まれは何と太田寮監だった。日頃の感謝の気持ちも込め、みな大きな声で「ハッピー・バースデー」を歌った後、花束を贈呈。バースデーケーキ―のロウソクの灯に息をふうーっと吹きかけた。炎が消えると,大喝采。寮生活の楽しい一面を垣間見た瞬間だった。
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静聴寮は、10年前に亡くなった教会員の宮津さんの遺贈した土地に建てられ、今年で4年目になる。教会では、宮津さんの思いを継承できる場所にしたいと5年前、「宮津智加代さん遺贈財産活用委員会」を設置。その委員の一人で、現在、静聴寮運営責任者の大倉信彦さんは、こう語る。
「宮津さんは、一切のものを自分のために使わず、人と教会のために使っていた。『神の愛を伝えることができるのは教会のみ。今の聖隷を応援するのは教会の務めです』という宮津さんの願いは、若い世代の子が育っていくこと。この宮津さんの思いを具現化したいと祈り進めてきた結果、仕える人を育てるという目的で、隣接の大学で学ぶ学生のための学寮を建てるに至ったのです」

バースデーケーキに息を吹きかける太田寮監

実は宮津さんは生前、「静聴寮」の名前で、大学生のための寮を管理運営していた。かつて寮に居住していた卒業生たちは、「宮津さんや教会の人たちとの関わりの中で養われ励まされた。静聴寮が復活するんだ」と喜んだという。
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静聴寮は鉄筋構造2階建てで、一人部屋が10室。居住施設にはエアコン、テレビ端子、インターネット端子(月2千円で使用可)、ミニキッチン、トイレ(ウォシュレット)付ユニットバスを完備。共用施設のシェアルームには全自動洗濯機、冷蔵庫、IHコンロ、エアコンが設置されている。
入寮資格は、▽聖隷の精神を引き継ぎ、神と人とに仕えることを願い、キリスト教に関心を持ち、真摯に学業に励もうとの志がある女学生(留学生含む)、▽他者と協調できる人、▽原則として自宅から通学2時間以上かかる人。大学・大学院に在籍中は入寮できる。選考は、教会が面接と作文で決定する。

寮生から祝福を受ける太田寮監(前列中央)

入寮者の心得としては、寮生による自治組織「リラの会」にすべての寮生は加入し、会議、防災訓練、月礼拝、聖書・聖隷の学び、誕生会、クリスマス会などの各種行事に原則、全員参加を義務付けている。また、日曜日の礼拝や教会での行事に積極的に参加することを勧める。
寮生に話を聞いた。まずは、なぜ看護師、介護福祉士、作業療法士を目指そうと思ったのか。「私の母と姉が看護士をしていて、小さい頃から見ていたので、私も看護士になりたいなと」、「祖母がリハビリ専門の作業療法士のお世話になった。祖母は、病気になってから外出できなくなりふさいでいたが、リハビリの方が来ると楽しそうだった。その姿を見て、私もそういった人になりたいなと」
寮生活の良さについては、「実習から疲れて戻って来た時に、寮の先輩が代わりにご飯を作ってくれた」、「実習が終わった後、シェアルームで分からないところを教え合うことができた」、「一人っ子なので、みんなと一緒にいると楽しい。結構、寝坊が多く、起きるのを助けてもらった。誰かのために何かするのは励みになる」、「家族みたいに親しく接してくれる。看護学部は170人いるので、この寮に入っていなかったなら、たぶん話せない人もいた」等々。
ミャンマーの留学生も寮生として生活している。彼女は「言葉が分からない時は教えてもらった。役所に出す手続きなども手伝ってもらった。みんな親切」と笑顔で話す。太田さんと寮生たちが醸し出すいい雰囲気がひしひしと伝わってきた。
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【静聴寮】〒431- 1304静岡県浜松市北区細江中川7220ノ10。問い合わせは、Tel053・437・5632、遠州栄光教会 三方原まで。【中田 朗】