三浦綾子を「目と耳」で味わう G&M「JSUブッククラブ」
G&M 「JSUブッククラブ」で三浦作品も 「目と耳」で味わいみんなで話す
G&M公開ブッククラブの様子
三浦綾子作品をグループで分かち合う試みはデジタルサービスを展開する新しい働きの中でも生かされている。「聴くドラマ聖書」をリリースしている「G&M」(一般財団法人日本G&M文化財団)は、プロの俳優、声優を起用した音声コンテンツを生かした「みんなで聴く会」開催を促している。
聖書を聴く「PRSバイブルクラブ」のほかに、キリスト教書を聴く「JSUブッククラブ」があり、すでに三浦綾子作品の『夕あり朝あり』『愛の鬼才』『われ弱ければ』がラインナップ。5月には『ちいろば先生物語(上)』がリリース予定だ。
3月から『われ弱ければ』を聴くG&M主催の「JSUブッククラブ」が毎週金曜日正午から1時間Zoomで開催されている。約30分の朗読と分かち合いというシンプルなプログラムで誰でも参加できる。記者も体験してみた。
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プロの声優が書き込みをして丁寧に準備された朗読原稿
『われ弱ければ』は明治時代初期の教育者、社会事業家の矢嶋楫子の生涯を描いた伝記小説だ。参加日は第三回目で「逢瀬」の章だった。キリスト者になる前の出来事ではあるが楫子の生涯の中でも後々問題にされた「逢瀬」だ。三浦綾子は楫子の境遇や心の移り変わりを丁寧に描く。朗読は江戸の雰囲気が残る町の描写をきびきびと読み、人物ごとに声色を変える。心の揺れ動きも繊細に表現する。
参加者からは「罪を犯した経緯が説明されることで、読者も赦す気持ちになる。人を裁いてはいけない」「罪意識が後の楫子の活躍につながる。罪は赦されるが、何を赦してもらったのかは忘れてはいけない」「『離婚をしたことがない人に私の苦しみはわからない』と友人に言われたことがある。世間体など、周囲は偏見を持つが、本人はどのように苦しむのか理解を深められた」などの声が上がった。
「JSUブッククラブ」では3人以上でクラブを作って申し込むと、無料オーディオブックにアクセスできる。初回は特典として書籍が人数分贈呈される。「目と耳で味わうことで理解が進む」と勧める。ZoomやLINEでも実施が可能なため、コロナ禍で対面での集会が難しくなる中、学び会に活用されてきた。3月時点で全国で215ものブッククラブが開催されている。
プロの声優による朗読が聴きごたえある。制作担当の内野聖子さんは「登場人物が東北出身か九州出身か、どんななまりがあるか、など徹底的に調べて臨んでくれる」と声優のこだわりを話した。「音声エンジニアも『聴くドラマ聖書』制作時からかかわっている方で、もともと音楽関係専門だった。朗読の収録を共に学んできたので、チームワークもできてきた」と言う。
(クリスチャン新聞2022年4月17日号掲載記事)