【レビュー2】救いの始まりから完成までを三重の切り口で 『人はどこから来て、どこへ行くのか?《神のかたち》の人間観』 評・関野祐二
ゴーギャンの絵画に記された「我々はどこから来たのか我々は何者か 我々はどこへ行くのか」との問いかけに正面から答えた渾身(こんしん)の作。前著『わかるとかわる!《神のかたち》の福音』(二〇一七年)の普及版なら気軽に読めると思ったのは甘かった。
前著の序章と終章にあった「三つの物語」はもはやなく、より洗練かつ凝縮された救いの物語絵巻が、「神のかたち」を軸に隙間なく埋め尽くされている。副題は「神のかたちの人間観」と控え目だが、実のところ人間の綜合救済論であろう。救いとは「神のかたち」の回復/完成だからだ。今ここでいかに生きるかの指南書とも言い得るが、著者はこれを「有用的(役立つ)神学」と名付ける(336頁)。
他書にない本書の特色はまず、「神のかたち」の意味、罪による毀損、神のかたちの原型たるイエスの受肉・十字架・復活(以上前半)、(以下後半)神のかたちの回復、使命、聖霊の働き、そして神のかたちの完成という、救いの始まりから完成に至る全項目を「関係概念」(契約)、「実体概念」(いのち)、「目的概念」(使命)という三重の切り口で読み解く画期的方法論であろう。
読者は14~15頁「救いの構造=《神のかたち》のスキーマ」の表を壁に貼るなり、付箋で開けられるようにして、今自分がどの項目を学んでいるか確かめながら進むと良い。こうも見事に整理されて「やられた!」と思うのは、著者と同じ理系牧師(リケボ)だからか。ついでながら、「おわりに」(333~334頁)は全体像をつかむため先に読むことを勧める。
もうひとつの特色は、ここ十年来議論されつつも福音派で扱いがどこか躊躇(ちゅうちょ)されてきたイシューに鋭く切り込んでいること。それは贖罪論(十字架理解)に顕著で、刑罰代償説に代わるイエスの従順勝利説(144頁)は圧巻。「研究ノート」にある「神の義とキリストの信」「聖と霊と命」「贖いと宥め・償い」はどれも見逃せない必須項目である。
教会の学び会で使ったら、牧師や指導者のほうがきっと目が開かれること請け合いだ。
(評・関野祐二=聖契神学校校長)
『人はどこから来て、どこへ行くのか?《神のかたち》の人間観』
河野勇一著、ヨベル、2,200円税込、四六判
【お知らせ】★4月から週刊「クリスチャン新聞」がリニューアルしました!!★
☆紙面レイアウトを刷新 文字が大きく読みやすく