特集フォーカス・オン 忍び寄るフェイク

ネットで陰謀論・偽科学に夢中

クリスチャンの友人がインターネットの怪しいサイトに夢中になっている。異端ではないか|新興カルトに関する情報サイトとして2019年10月に超教派で立ち上げられた「異端・カルト110番」の相談窓口に、従来の〝異端問題〟とは少し毛色の変わった相談が寄せられるようになったのは昨年秋頃から。ひとりで部屋に閉じこもっているのに、まるで「異端」と言われる団体に通い詰めて、特殊な教義を何日間も繰り返し教え込まれマインドコントロールされるカルトの被害と同じようにのめり込んでしまう。コロナ禍で一体何が起きているのか?

コロナ禍 >>マインドコントロール様変わり

相談された「怪しいサイト」を異端・カルト110番が調べてみると、それは、
「Eden Media(エデンメディア)」というYou Tubeの動画チャンネルだった。キャッチフレーズは「TRUTH WILL SET US FREE(真理は私たちを自由にする)」だ。その番組ではところどころ聖書が引用され、「聖書は66巻ではなく、もともと80冊だったが多くが取り除かれ66冊になった。この数字〝66〟に悪魔的な意味がある」とほのめかすなど、どこかキリスト教と関係があるかのようにも見える。
しかし番組の内容は、「5G」の電磁波が人体に危害を与えるとか、コロナウィルスの世界的パンデミックが事前に予想されていて、ジョンズ・ホプキンズ大学がビル・ゲイツ財団と合同でそれが世界経済に与える影響をシミュレーションしていたとか、背後にカバラやフリーメイソンなどユダヤの秘密結社の存在を示唆したり……あげくの果てに、地球は球体ではなく平面で宇宙は存在しないと主張する「フラットアース」論や、地球に山や森は存在しない(錯視のようにそう見えているだけ)などの荒唐無稽な奇説が並んでいる。

Eden Mediaの番組には、地球は球体ではないという「フラットアース」論や、「山や森は錯覚で存在しない」などの珍説が並ぶが視聴回数は多い

不安に〝答え〟くれる情報検索

ビル・ゲイツ

エデンメディアは調べてみると、都市伝説と陰謀論と疑似科学をない交ぜにしたような代物だった。だが聖書が持ち出されるからか、それに夢中になる人々がクリスチャンの中にもいる。チャンネル登録数は、異端・カルト110番が調査した昨年11月の時点で7万5千500人だったが、今年8月8日には9万3千100人まで増えていた。荒唐無稽な番組の視聴数は数万回から数十万回と侮れない。
異端・カルト110番の報告記事「You Tubeで陰謀論にハマる人たち〜なぜ、荒唐無稽な奇説に夢中になるのか?」によると、ネット上でこの種の不安をあおる情報が視聴回数を稼ぐ理由があるという。「インターネットの世界は真偽の定かでない情報がいくらでも発信できてしまうが、ある種の番組を見続けることによって、ちょうどカルトのマインドコントロールと同じように夢中になってのめり込んでしまう」と指摘、次のように警鐘を鳴らしている。
自分の意思で情報を検索して調べたと思い込んでいるが、危機感をあおるような番組で不安をかき立てられると、それに関連するキーワード検索をするようになる。すると似たような情報が次々表示されるようになるので、それがあたかも今、世界中で大問題になっている重大事であるかのごとくに思い込んでしまう…インターネットは検索によって自分の知りたい情報を簡単に集められる便利さがあるが、そこには陰謀論にはまりやすいという落とし穴があるのだ。|
日常生活に忍び寄るフェイクのワナは都市伝説的なものだけにとどまらない。
(後半に続く)