【連載】世の目人の目聖書の目ー世相を読む⑤ 誠実さと心の隙間を狙うカルト
碓井 真史 新潟青陵大学大学院教授/心理学者
世界平和統一家庭連合(旧・統一協会)の問題が、これまでになく大きく注目されている。昼のワイドショーから夜のニュースまで。スポーツ新聞から三大紙まで。連日の話題だ。さらに、立憲民主党は「旧統一教会を巡る被害を調査・検証するための対策本部を立ち上げ」と報道されている。30年前にもアイドルの入信で話題になったが、当時よりもさらに大きな動きだ。
母親の入信による経済破綻と家庭崩壊から起きたとされる、安倍元総理銃撃事件。世界中に激震が走り、近年話題になっていた「宗教2世」問題にもさらに注目が集まっている。クリスチャンたちも、もちろん動いている。祈りの会が生まれ、日本基督教団カルト問題連絡会も活発に動いている。
世間の関心外で活動を続けた旧統一協会
さて、私たちはこの30年、どうだったろうか。この30年間、統一教会の話題がマスコミに出ることは少なかった。当時の大学生なら、「統一協会」のことも、その学生団体である「原理研」のことも、有名だったろう。だが今の学生に聞くと、「統一協会」の名前は聞いたことはあるがよく知らないと答える。私たちも、「世界平和統一家庭連合」(統一協会から名称変更)や、「CARP」(カープ:原理研究会を英訳しアルファベット表記)はよく知らない人も多いだろう。
私たちが忘れている間にも、「統一協会」は活動し続けてきた。被害者は出続けていた。学生団体カープは、全国の国立大学や大規模私大に今も存在し、環境問題やSDGsに取り組み、市から補助金を受けたり、市長との勉強会をしたりするなど、積極的に活動している。その様子をホームページで見ると、実に爽やかな好青年たちだ。
どんな人がカルトのマインドコントロールにかかりやすいかと質問されることがある。弱い人や、悩んでいる人だろうか。実はそんなことはない。最も多いのは、普通の人だ。強いて言えば、より良い家庭や社会を望む誠実な人たちだろう。どんな時にマインドコントロールされやすいかと言えば、不安な時であり、変化の時だ。以前のところから離れ、新しいところにはなじんでいない、そんな時をカルトは狙っている。
元総理銃撃事件の容疑者は、20年間悩み続けてきたが、親の宗教問題など誰にも相談できなかったという。多くの教会は「当教会は統一教会とは一切関係がありません」と表示するが、それは悩んでいる人に無関心というわけではないだろう。
カルト問題は、安易に関われる問題ではない。しかし、目の前に困っている人がいれば助けたい。カルト問題と闘い続けてきた人々を支援したい。私の町にも「世界平和統一家庭連合 ○○家庭教会」がある。近隣の国立大学にはカープがある。聖書を学ぼうと思った誠実な人たちが、心を支配され苦しんでいる。
(クリスチャン新聞web版掲載記事