私は以前、DV被害者の支援施設で心理カウンセリングを行っていた。当時思っていたことは、被害者支援と同時に加害者へのアプローチをしなければ根本的な解決にはならないが、DV加害者は自覚のない人も多く、そういう人が変わるのは難しいだろうということだった。

しかし、昨年、栗原加代美さんのことを知り、クリスチャンである彼女がDV加害者更生の働きをしていることに驚き励まされた。

本書は栗原さんによる「被害者支援と加害者更生はDV解決の両輪」というパートから始まり、続いてライターの中田朗氏による加害者へのインタビューとグループワークのレポートがあり、最後に心理学者碓井真史氏の文章からなる三部構成で、この働き(NPO法人 女性・人権支援センターステップ)が立体的に理解できる。

最初の部分では、栗原さんがどのようにしてこの働きを始めるに至ったか-神と出会い、信仰に基づいて働きを始められたとわかる。加害者更生のプログラム自体は、グラッサー博士の「選択理論心理学」とアンガーマネジメントといった心理学の理論に基づいていることに信頼感が持てる。

中田氏によるインタビューを読むと、加害者の方々がただ反省するのではなくて、自分の怒りや暴力が「力による支配」を求める行為であり、自分が怒りを選んでいたこと、怒りには傷つきがその陰にあることなど、自分と向き合い学びを深めている様子がみえる。グループワークのレポートでは、参加者ひとりひとりが率直に自分の気持ちを吐露し、それを栗原さんらがしっかり受け止め、暖かくフォローしている様子が臨場感をもって伝わってくる。これを一年間毎週行えば人は変わっていけるのだと、グループの持つ力にも感動さえ覚えた。

DV被害・加害のチェックリストや「怒りをなくす魔法の言葉」の一覧も助けになる。コロナ禍でDV相談件数が増えている昨今、関心のある方はぜひ一読を。
(評・小渕朝子=公認心理師、臨床心理士、カウンセリングオフィスお茶の水)

 

DVからの家族再生 加害者が変わる5つの条件
栗原加代美著、いのちのことば社
1,460円税込、B6判

 

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