国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」によると2021年現在、死刑廃止は108か国。一方、死刑存続・執行国は55か国だが、先進国では日本と米国のみ。そんな状況の中、死刑制度の是非を問う映画「死刑」が11月、都内の映画館で公開される。監督・脚本は宮本正樹氏だ。

死刑賛成、反対の主張で真っ向から対立。映画のワンシーンから

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舞台は20××年。日本政府は世界的な死刑廃止の流れを受け、死刑の是非を検討するため、各世代ごとに諮問委員会を設置。国民の声を聞く作業に入る。
30代のグループでは、マイナンバーにより無作為に選ばれた男性弁護士と男性医師、産業廃棄物処理場で働く男性、主婦、日本国籍を取得したクリスチャンの白人女性5人が主張をぶつけ合う。
1か月に1回、3度に分けて行われた委員会のシーンでは、最初は賛成派と反対派が真向から対立するが、それぞれの人生が反映され相互理解が深まると、二極対立から相手を思いやる柔らかい空気へと変化していく。その心の機微を見事に表現する若手俳優らの演技が見ものだ。
同作品は、憲法9条をテーマにした「第9条 国民投票」、原発の是非を問うた「国民の選択」に続くシリーズ第3作目。どれも意見の異なる立場の人たちが一堂に集まり、それぞれの主張を戦わせ、討論する内容だ。

2018年11月に深沢教会で行われた映画「憲法9条 国民投票」上映会で語る宮本氏(左)

宮本氏はこう語る。「日本ではどちらかに偏りがちだが、いろんな考え方があっていい。自由に意見を言い、自分の考えを持ちつつも違う考え方の意見にも耳を傾ける。論破ではなく、話し合いが大事だ。そのやり取りこそが、民主主義ではないか。映画では、そのことを表現し、みんなが見て考えることをメインに据えている」
上映は11月4~10日、東京・豊島区の池袋シネマ・ロサ(URLhttps://www.cinemarosa.net/)で。
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宮本氏は9月18日、東京・世田谷区駒沢の深沢教会の礼拝で洗礼を受けた。
きっかけは、クリスチャンで同教会員の義母と出会い、教会と触れ合うようになったこと。2018年10月に同教会で、映画「第9条 国民投票」の映画試写会と山尾志桜里議員(当時)とのトークショーも行った。「『明日のことを思い煩うな。一日の苦労は、その日一日だけで十分』(マタイ6・34参照)という言葉が今の自分にピッタリだった。神様を信じることを自分のアイデンティティーにしようと思い、洗礼を受けた」
どんな作品を世に出すのか、今後の活躍にも注目したい。

クリスチャン新聞web版掲載記事)