避難所情報一目で分かる「災救マップ」 「災害時こそキリスト者に期待」
「関キ災第7回懇談会」で稲場氏講演

関西キリスト災害ネットワーク(関キ災)主催の第7回懇談会が11月7日、大阪府東大阪市の大阪シオン教会の会場とオンライン併用で開催。稲場圭信氏(大阪大学大学院教授)が「宗教者による災害対応の現状と課題」をテーマに、オンラインを通じて講演した。

稲場圭信氏

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初めに稲場氏は、社会構造の変化、社会問題の多様化、多文化共生の危機、少子高齢社会と家族構造の変化などを挙げ、「分断社会、共助がない現実の中に今、私たちは生きている」と指摘。そんな中、「苦難の中にある人々に寄り添い、共に生きていることを日々実践している宗教者への期待が高まっている」と言う。「2013年の第11回学生宗教意識調査報告では、災害時に宗教や宗教家の役割は、必ずある、いくらかあると考える学生が7割近くに上り、避難場所としてのスペースの提供、心のケアなどの期待が高かった。16年の第3回宗教団体の社会貢献活動に関する調査でも、宗教家や宗教施設が果たす役割として、避難場所、支援物資の集積所が第一に上がっている」
その上で、東日本大震災以降、自然災害が頻発する中、近年の災害時の課題として、⑴避難所のスペース不足、⑵停電通信の遮断、⑶避難所情報の不伝達、の三つを挙げた。「2020年9月上旬に台風10号が近づいた時は、九州・山口の8県で開設された避難所5千132か所のうち383か所で収容人数を超えた。避難所をさらに拡充する必要がある。各地の自治体は、災害時に宗教施設を避難所として提供してもらえるよう、宗教者と災害協定を結ぶ必要がある。全国にある7、8万のお寺、神社の多くは協力関係にあるが、今後はキリスト教会もこういった活動が広がっていくのではないか」

災救マップ

これら三つの課題を解決するために、大阪大学は国からの援助を受け、未来共生災害救援マップ(災救マップ)を開発し、社会実装を進めていることにも触れた。「全国のデータがインターネット上で見られる。スマホでQRコードを読み取るとマップが見える。そして、GPSで皆様がお住まいの周辺にどんな施設があるのか見えるようになっている。これはアプリではないので、ダウンロードの必要もない」
「災救マップには、公開系と管理系の二つの機能があり、公開系では一般市民が避難所情報を閲覧できる。管理系は、施設管理者や避難所情報管理者が施設情報と避難情報を更新・管理できる」
「日本では、宗教者と政府との関係でいろんな問題がある。しかし、災害は待ったなしだ。宗教者の皆様の使命として、苦難にある人々(隣人)に寄り添っていくという教えのもと、防災の取り組みを止めてはいけない。教会の皆様が、日ごろから災救マップを使って輪を広げる。それが災害時に人を救うことにつながる」と結んだ。
災救マップについてはURL http://relief.hus.osaka-u.ac.jp/map/で。

2022年11月20日号掲載記事)