恵泉女学園中学・高等学校(東京・世田谷区)を訪問した5月中旬、中高全学年の朝の礼拝が開かれていた。一階席は埋まり、讃美歌唱和や聖書交読の声が響いた=写真上=。コロナ禍では、オンライン化などの対応を余儀なくされたが、段階的に礼拝の内容が戻った。


続いて見学した6年生(高校3年生)の聖書科の授業では、学園長の廣瀬薫氏が、「神の国」の視点について講義。生きる目的、原動力、使命と仕事などの内容に、生徒たちは真剣に耳を傾けていた=写真上=


創立以来重視するのは「聖書」「国際」「園芸」の三つの礎だ。本山早苗校長=写真上=は「すべてのベースは『聖書』。『国際』では、他者を自分同様に尊重することを学び、『園芸』では、人間と共に、命あるすべてのものを造られた神様の恵みに感謝する」と話す。

「世界大恐慌があり、経済の行き詰まりから、社会が戦争に向かっていた1929年に、河井道が本学を創立した。戦時中、学生が工場に動員された時も、作業前の礼拝は絶やさなかった。コロナ禍、ウクライナとロシアの戦争、エネルギー危機の中にある現在、改めて平和の理想を掲げたい」

「聖書」「国際」「園芸」は、「考える」「発信する」「共に働く」というねらいを具体化する。大学受験を控える6年生の夏には、受験の日常から離れ、「修養会」を実施する。「恵泉での日々を振り返り、自分の使命について思索し、友と語る二泊三日です」

国際理解教育、平和学習ほか、有志の「一日平和ウォーク」、「ヒロシマ平和の旅」などもある。「世界に出ていくことだけではなく、置かれている場で平和を作り出す。子どもや女性、弱者、社会のひずみにも目をとめたい。そのためには、まず自分自身の考えを持ち、自己肯定感を高めることが重要。廣瀬学園長も力説するように、間違った宗教は人を生かさない。恵泉のキリスト教は、すべての人を活(い)かす生き方を考えるもの。周りを輝かせ、神の国を進展させるものです」

学内の圃(ほ)場やビオトープでは、生徒たちが花や野菜、作物を育てる。栽培から収穫までかかわり、中学では押し花、クリスマスの装飾、高校では花壇設計なども行う。

オンライン化など教育の手法は変化しても、「大切にしたいのは共感力」と言う。そのカギとなるのは生徒が自らの体験や思いを言葉にして語る「感話」だ。内面的な問題や進路の悩み、さらに気候変動、平和、ジェンダーなど社会的な問題についても語る。「自分が話すだけではなく、他の人の話を聞き、様々な考えや価値観を知り、生き方を考える時間になる。コロナ禍、戦争、AIの発達など、先の見えない社会だからこそ、自分と共に周囲の幸福も希求する。そのために、お互いに聴き合う風土を育てたい。『感話』が恵泉教育の土台」と述べた。

毎月実施する、キリスト教の福祉施設、支援団体などへの献金、各学年1人ずつ里子を支援する活動もある。ほかにも東日本大震災以来つづく、東北の漁師の方々との交流など、有志の奉仕活動も盛んだ。「学び、祈りで終わらず、実際に動く。礼拝と奉仕が恵泉らしさ」と語った。【高橋良知】

2023年06月18日号 04面掲載記事)

 

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