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ウクライナのNATOをめぐる件について、いろいろな方々から意見を求められました。私たちはもちろん複雑な思いで見ています。

現在進行形で戦争をしている紛争当事国をNATOに入れるわけにはいかないことは、ウクライナも百も承知です。そんなことをすればNATO対ロシアの戦争になってしまい、世界大戦になってしまいます。

では「ウクライナが戦争を終わらせればNATOに入れる」という言い方はどうかというと、それは逆に言えば「戦争が続いている限りはウクライナはNATOに入れない」ということを意味するもので、それはロシアがウクライナでの戦争をなんとか継続させようとするインセンティブを与えてしまうことになります。そうなると、ウクライナが本当に破綻してしまいます。

では、停戦論者(Cease the Fire論者)たちがおっしゃる「とりあえず武器を置いて停戦し、交渉に入る」というのはどうかというと、これは実はロシアが軍を立て直す時間を与えるだけで、停戦期間が終わったら総攻撃するための体制を立て直すだけになる可能性が極めて高いという問題があります。

確かに停戦期間中は平和になったように見えても、それに続くパワーアップされた総攻撃はさらに熾烈なものとなり、悲惨な結果を生み出すだけになると考えられます。好む好まざるに関わらず、ロシアはそういう国なので、ここは理想主義的にではなく現実主義的に見るべきところだと思います。

では、どうすればいいのか。やはり今はウクライナが西側からの限られた武器供与で(本当に悲しいことに)人的資源(なんと冷淡な表現でしょう)を犠牲にしながら領土奪還を図り、せめて南部ザポリージャ・ヘルソン方面でアゾフ海にまで到達してクリミア半島を射程距離に収めることができれば、その時点でロシアから停戦(終戦)交渉を切り出してくることが予想されますので、それにウクライナが応じる形で決着を図り、同時に再軍備をするロシアからの再侵攻の脅威から自国を守るための安全保障を国際的な枠組みの中で取り決めてもらう、という方向で頑張っているのだと思います。

したがって、当面はウクライナの兵士たち(ロシアの兵士たちもですが)が犠牲になることを前提とした戦況が続くことになるのだと思います。本当に本当に悲しいことです。本当にやりきれない思いです。そんな中で私たちの周りでも徴兵委員会への出頭命令が増えている現実などを目にし、本当に言葉にできない暗澹たる思いになっています。ただ、主のご介入を祈るばかりです。

決して大きな国ではないウクライナが自分たちの数倍の軍事、経済規模をもつ核保有国によって侵略され、蹂躙(じゅうりん)されている中で、必死に祖国防衛をしている中、そんなウクライナを批判し揶揄(やゆ)する声がしばしば聞かれると、深い悲しみを感じます(私たちもウクライナがすベて正しいと言っているわけでは決してありません。さまざまな問題を抱えています。しかし、侵略され、民間人が犠牲になっているのはロシアではなくウクライナだという点だけは議論の余地がないと思っています)。

そんな中、ウクライナの立場を理解し、応援してくださっている方々の声には本当に励まされています。 一日も早く、ロシアが侵略を断念し、ロシア軍がウクライナ領土から自分たちの領土に撤退することによって戦争が終結することを心から祈っています。

尊いお祈りに心から感謝いたします。

船越真人・美貴