【レビュー】『神様と人の愛に包まれて―今を生きる若い人に贈るメッセージ』『今日と明日をつなぐもの―SDGsと聖書のメッセージ』『共に生きる「知」を求めて―アジア学院の窓から』
『神様と人の愛に包まれて―今を生きる若い人に贈るメッセージ』(西村隆著、宮本雅代編著、いのちのことば社、千650円税込、B6判)は、不治の難病ALSの患者である西村隆氏と、妻・宮本雅代氏による、講演や寄稿の集成。日本はALS介護の先進国だが、症状が進行しTLS(意識はあるのに意思表示は不可能な〝閉じ込め状態〟)となっても生死の選択権がない。しかし法整備を望むのではなく、ただ生の意義について神と向き合った患者たちの、無音の叫びへの傾聴に、本書は招く。
『今日と明日をつなぐもの―SDGsと聖書のメッセージ』(青山学院宗教主任会編著、日本キリスト教団出版局、千430円税込、四六判)は、教育現場の礼拝で、小学生から大学生に向けて語られたメ
ッセージ集だ。その示唆に富むこと、消費社会のSDGs運用実態は遠く及ばない。SDGs(持続可能な開発目標)は極めて聖書的な価値観の適用であるのに「商業主義の手先に堕(お)」ちている実態は、教育現場で明らかにされる。
『共に生きる「知」を求めて―アジア学院の窓から』(荒川朋子著、ヨベル、千320円税込、新書判)は、今年50周年を迎えた同学院の校長による式辞・講演・寄稿を集成。農村伝道は「辺境伝道」とも言え、その「辺境」が地理的な位置関係ではなく、〝周辺化された人々〟を指すとすると、その周辺化は都市でも起こっていることに目を留めると……持続性ある開発の先端を行く農村は、即物的な消費行動へと後退した都市へ、問いを投げる。
(2023年10月01日号04面掲載記事)