連載「祈り」つなぐ~JCE7各集会から⑤ 召命の確認/主にある多様性 「Samurai Projects」「平和研究会」
第七回日本伝道会議(JCE7)の各集会を宣言文「『おわり』から『はじめる』私たちの祈り」(以下宣言文「祈り」)に沿って伝える。連載第5回は「Samurai Projects」と「平和研究所」についての分科会から。
前回まで
☆① 全年代で「次世代」育てて 「次世代育成者のためのカンファレンス」上 2023年10月29日号
☆② 共に成長する姿見せたい 「次世代育成者のためのカンファレンス」下 2023年11月05日号
☆③ 日本的家族観をこえて 「次世代育成検討」「ファミリーミニストリー」2023年11月12日号
☆④ 確かな聖書的土台が現代に必要 「2030年に向けた青年宣教」「聖徒聖書学校連盟」 2023年11月19日号
2.立場を越えた宣教協力を「はじめる」
宣言文「祈り」の「2.立場を…」には「信徒と教師が、互いの役割の違いを理解しつつ協力…」とある。「分科会33 Sam
urai Projects―次世代の働き人の育成、新たな始まりの1つ」は、働き人育成の新たな形を提示している。
近年、学生たちの就職活動などにおいて大きく活用されるようになったインターン制度。その仕組みを、Ⅱテモテ2章2節に立って、クリスチャンの献身に適用しようという取り組みが侍プロジェクツ(Samurai Projects)である。
日本の教会文化では、献身の思いが即神学校入学に結びつけられることがほとんどだが、その前の段階で自分の賜物を磨き、また牧師としての召命を確認する機会を提供することを目指している。
具体的には、教会での2年間のフルタイムインターンシップを通して、実践的に試され整えられる中で、その後の進むべき道を確認する。また、インターン生同士の交わりや学びを通して互いに励まし合うとともに、インターン生を受け入れる教会へのサポートも行っている。
分科会では、サムライ・プロジェクツの概要が説明されるとともに、「サムライ生」と呼ばれるインターン生が実際の体験の中で学んでいることを発表した。教会を支える次世代を育成する新たな取り組みとして、今後の展開に注目したい。
3.教派を越えた宣教協力を「はじめる」ことができるように
宣言文「祈り」の「3.教派を越えた…」には、日本の教会史を振り返る一文がある。「日本に置かれたほとんどの教会は、教派を越えた協力のなかで、戦争に加担し、天皇を神とする偶像崇拝を行い、アジア諸国においても神社参拝を強要する国家に与するという罪を犯しました…」。第一回日本伝道会議以来継承された、戦争責任の悔い改めの上に、「この時代の政治状況を注視し、為政者のために」とりなすことを促す。
ロシアとウクライナ、イスラエルとパレスチナ、東アジアをはじめ世界の紛争・緊張関係の中で、日本の平和の在り方も問われている。日本福音同盟(JEA)社会委員会を母体とするJCE7プロジェクト「平和研究会」の分科会では、ホームページ上で、幅広い論文の寄稿を開示して、「キリスト教平和論」を広げ、深める構想が話された。
発起人の一人の上中栄さん(ホーリネス・旗の台・元住吉教会牧師)は「みなが小さな正義を言い合い、多様性をまといながらも、分断志向になっていないか。平和を訴えるほど、争いが起きることがある」と現状認識を示した。「聖書信仰」と「ナショナリズムとの対峙(たいじ)」を軸にJEAが結集した経緯を踏まえつつ、「自己の絶対化でなく、相手を知ることが大事」と対話の姿勢を促した。
同研究会代表の児玉智継さん(JECA・布佐キリスト教会牧師)は哲学者ハンナ・アーレントの「公共性」概念を手掛かりに講演。「全体主義に陥る危険を避けたい。『聖書に書いてあるから』というだけで思考停止になるのではなく、神学的、哲学的検証が必要だ。〝複数性〟に耐えることが求められる。しかし、かしらであるキリストにある一致が真の多様性だ。同研究会では、教職、専門家だけではなく、信徒からの寄稿も募りたい」と勧めた。 (つづく)
(2023年11月26日号 03面掲載記事)