《連載》世の目人の目聖書の目㉑ エホバの証人性被害報告を受けて
碓井 真史 新潟青陵大学大学院教授/心理学者
発達段階を無視した教育は虐待にも
エホバの証人の元2世信者らによる団体が、11月28日、教団内での性的被害に関するアンケート調査の結果を公表した。各メディアによる報道が同日から行われているが、筆者は報告書を直接見る機会を得た。
そこには、性暴力被害に加えて、男女交際や性的な行為を強制的に告白させられたり、年齢にふさわしくない性的内容の教育を強要されたりなど、159人から218件の被害申告が寄せられていた。これらの被害は、もちろん氷山の一角に過ぎないだろう。
性的被害は、残念ながらどの団体内でも起こりうる。問題は事後の対応だ。報告書によれば、多くの被害者が誰にも相談できていない。また家族や教団内の人間に相談した場合でも、まともな対応がされなかったことがわかる。2人以上の目撃者が必要との理由で、聴聞会が開かれなかった事例もある(聖書の言葉の曲解)。エホバの証人のむち打ちは体罰として問題視されているが、今回は、思春期を迎えた生理中の少女が、家族以外の人がいる前で下着を下ろされ尻をむち打ちされた例も報告されている。
人間が作る組織は全て不完全だ。しかし自分たち以外を全否定し、自分の組織だけが絶対とするカルト団体は、自浄作用を働かせることができない。教団外の人間関係を持たない宗教2世が、相談相手を持っていない問題もあるだろう。
性加害は、エホバの証人の組織的問題ではなく個人的問題だとの言い訳もできるかもしれない。しかし、年齢不相応の性的教育は組織的に行われている。エホバの証人は、乳幼児から高齢者まで同じプログラムに参加する。時にはポルノはいけないという話を具体的な個々の性的用語を交えながら、朝から晩まで聞かされ続けることもある。望ましい性生活の話題で、肛門性交とか獣姦(じゅうかん)などといったことが子どもたちのいる前で具体的に語られてもいる。それらの内容はエホバの証人の出版物内にもあり、見せられたり音読させられたりもする。もちろん性教育は必要だが、全ての教育は年齢に応じて行われなければならない。発達段階を無視した教育は、虐待にさえ、、、、、、
(2023年12月10日号 03面掲載記事)