現代的文脈と視座から福音を発信

英国ファラデー科学・宗教研究所の特別セミナーが1月、大阪、横浜、東京の3か所で開催された。27日、神奈川県横浜市の日本基督教団横浜指路教会を会場に行われた講演の内容を連載で掲載する。初回として、同研究所の紹介と今回日本初となるセミナーの趣旨を、実行委員会を主宰する細井宏一氏(日本基督教団・茅ヶ崎堤伝道所伝道師)が解説する。

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神と自然の一体感示したファラデー

ケンブリッジ大学・St.Edmund’sカレッジに併設されたFaraday Institute for Science and Religion(以下・ファラデー研究所)は、近現代自然科学の発展に大きな貢献をしたマイケル・ファラデーにちなんで創設された研究所です。ご存じの通り、ファラデーは著名な科学者であると同時に、熱心なクリスチャンでもありました。そして、その生き方は、生涯をとおして信仰者として、神と自然との強い一体感を指し示すものであったと言われています。

そのため、ファラデー研究所は、大学や教会での高等教育において、伝道と宣教を主たる活動目的として、キリスト教と自然科学との関係性を、今日的信仰と現代科学との視点から多面的に検討する取組みを行っています。またその研究成果は、英語のみならず主要な各国言語に翻訳されて積極的に公表されています。
換言すれば、ファラデー研究所の取組みとは、信仰と科学の両者を、聖書に立脚して熟考し、現代的文脈と視座から、その研究成果を、世界に向けた福音として発信するというものなのです。

国立大、神学校、教会で日本初講演

ファラデー研究所の活動の一環として、本年1月24日~30日の間、同所の著名研究者であるグラハム・バッド、デニス・アレクサンダー、マイク・ブラウンナッツの3氏が初来日し、日本におけるファラデーセミナー実行委員会の主宰を務める細井宏一も交えて講演会が行われました。訪問先として、国立大学では大阪大学、キリスト教会では日本基督教団・横浜指路教会、神学校では東京神学大学、という3会場が選定され、日本ならではの切口で当該セミナーが開催されました。

すなわち、厳格な政教分離が敷かれる日本の国立大学、クリスチャン人口1%に満たない日本の教会、日本およびアジアにおける伝道の課題を担う神学校、という毛色の異なる三者三様の会場での講演となりました。

今回に特徴的な日本講演におけるこうした特殊事情は、欧米各国での講演に精通したファラデー研究所の研究者達にとっても、大変な慎重さを要するストレスのかかるものであったようです。なお、各会場では以下の講演が行われました。

○大阪大学4件
「大きな問い」に科学で参与するとは?(アレクサンダー)/「人工知能」と「現代社会」(バッド)/「人工知能」と「テクノロジー」の関係性(ブラウンナッツ)/問題解決への3つのサイエンスの融合(細井)

○横浜指路教会4件
テクノロジーと教会生活(バッド)/起源とは─キリスト教における進化と創造─(アレクサンダー)/テクノロジーの世界でキリスト教を生きる(ブラウンナッツ)/現代日本における宗教と科学の関係(細井)

○東京神学大学2件
ファラデー研究所の概要紹介(バッド)/生物学的進化と神の創造(アレクサンダー)
(細井宏一記)

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次回は、グラハム・バッド氏による講演「テクノロジーと教会生活」の内容を紹介する。(つづく)

2024年04月07日号 07面掲載記事)