宣教の中核に「被造物ケア」を スワン・パークさん環境NGO「ア・ロシャ」国際代表理事
「被造物ケア」日々の生き方に根付くこと
6月5日は「世界環境デー」。猛暑や海洋汚染など、目に見えた環境悪化にともなって社会全体で地球の未来に危機感が抱かれている。キリスト教会でも「被造物ケア」の観点から様々な取り組みが進められてきた。
国際的な環境NGO「ア・ロシャ」が強調するのは「希望」だ。世界大の取り組みだけではなく、一人ひとりの内面も問い、地域で出来ることを勧めている。「ア・ロシャ」国際代表理事のスワン・パークさんが4月に来日した。日本ともかかわりが深いパークさんの思いを聞いた。【高橋良知】
パークさん
キリスト教信仰を土台にした環境保全の働き
「気候変動は今、世界の重要な問題。それも含むが、『ア・ロシャ』が中心的に取り組んでいるのは『生物多様性』」と言う。「ア・ロシャ」は、渡り鳥の調査と生息地の保護の活動から1983年にポルトガルで始まった。現在世界二十近い国に拠点がある。野生動物の生態調査と生息地の保護、環境教育と地域社会への働きかけ、キリスト教信仰と環境問題の関連性を理解する集会や発信をしている。キリスト教会はもとより、環境保護にかかわる国際機関とも連携し活動を広げてきた。
今年、「ア・ロシャ」神学ディレクターのデイブ・ブックレスさんの著書『被造物ケアの福音-創世記から黙示録のエコロジー』(いのちのことば社)が刊行され、4月には出版記念講演会(聖書的環境コンソーシアム、いのちのことば社共催、5月19日号既出)が開かれた。パークさんも来日してあいさつした。
福島原発事故をきっかけに日本の教会とつながる
現在カナダ在住のパークさんは、韓国出身。1990年代から飢餓や貧困を救援するキリスト教国際NGOでバングラデシュなど、各地で支援活動を続けてきた。その後、カナダ・リージェント・カレッジでマーケットプレイスミニストリーについて学び、キリスト教非営利団体のリーダーシップ、霊的形成に関するテーマで同大学の研究員となった。「キリスト教のNGOでも、資金調達や人材確保、経営など一般の団体と同じ課題に直面し、疲弊しているという問題意識があった」と言う。
そんな中、2011年3月11日に東日本大震災が発生し、衝撃を受けた。NGO時代の日本人の元同僚で、柳沢美登里さん(「『声なき者の友』の輪」カタリスト)に連絡をし、1か月後、4月11日には、日本に入った。大学とカナダのNGOから派遣され、日本の被災状況を調査した。
「福島が取り残されている」。「『声なき者の友』の輪」とともに、福島の人々と関わった。原発事故を経験した福島では、残る人、避難する人、移住する人が様々なジレンマを抱えていた。初期は福島県の教会の状況を英語で発信することもした。その後も専門性を生かして教会関係のリーダーを中心につながりをもった。
16年に、米国で「ア・ロシャ」が主催するシンポジウムに参加し、福島での取り組みを発表した。これをきっかけに「ア・ロシャ」にかかわることになった。
今回の来日では、福島県を再訪したり、首都圏で有機農業に取り組むクリスチャンの働きも訪ねた。「福島では教会が少なく、あっても無牧、兼牧の教会が多く、働き手が必要と思った。教会の中の働きは重要。交わりは孤独を助ける。さらに神の国の視点で、教会の外にも目を向けたい」と話した。
「新たな働き」ではなく在り方と実践
「被造物ケアは、宣教の中核的なもの」とも強調した。「教会は忙しい。『被造物ケアは大事』と言っても新たな働きを始めるのは難しい。実は被造物ケアは、『神の前にどのような存在であるか』ということ、、、、、、
(2024年06月02・09日号 09面掲載記事)
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