リビングで声掛けをする深澤さん(中央)

神奈川県相模原市の住宅街の一角に認知症専門の「グループホーム シオン相模原」(NPO法人シオン相模原)がある。一階キッチン併設のリビングが、利用者の憩いの場だ。

「ご飯食べた?」。職員がゆっくり話しかけると、利用者はこくりとうなずいた。はっきりした言葉での返答はなくても、そばに職員は居続けた。部屋には表情豊かな似顔絵が張り出されている。これらは利用者で元小学校の先生が描いた。「ささっとすぐに描かれるんです」と同ホーム長の深澤江い子さんは尊敬のまなざしで語った。

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元アパートを改築したシオン相模原

同ホームは、1階、2階の計9部屋に9人が居住している。車いすの人も多く、エレベーターで移動する。リビングでの食事は、それぞれのペースに合わせて出し、片付けの時間だけ合うように工夫している。「おだやかに、のんびり過ごしてほしい」と深澤さんは言う。かつては栃木や山梨など、様々な所に利用者と出かけたが、現在は、要介護認定が高い人が多く、その人々に合わせた接し方をしている。

同ホームは、相模原牧師会の協力の中で、高齢者ケアのニーズが提唱され、2000年に始まった。「まだグループホームもNPOもない時代。相模原市のNPO第一号として始まった」と同理事長で同盟基督・青葉キリスト教会牧師の漆間英幸さんは言う。「最も小さい者たちの一人にしたことは、わたしにしたのです」(マタイ25・40)の聖句を大切に働きを進める。

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漆間さんは月2回ホームを訪問し、利用者と賛美し、聖書の話、お祈りなどをしている。「お一人ひとり大切な存在。身体機能が低下したとしても、本来、自分よりも知識、知恵、経験の豊かな方々だ。尊敬の思いで接していきたい。現場は重労働。ベッドから身体を起こすことから始まり、着替え、入浴、など利用者の体重を預かることが多い。時には良かれと思ったことも拒否されることがある。仕えている職員の姿に尊敬と感謝の思いをもっています」

「今できることも、やがてはできなくなる。私たち自身も助けが必要な存在。今の利用者もかつては人を支える何らかの働きをしていた。そのような人と人のつながりの中で、互いに助けを必要とするかかわりを知る。この働きで、より深く相手を知ることが出来ると思う」と語る。

ホーム長の深澤さんはホームの雰囲気について、「仲が良く温かい、と訪問してくださるゲストやお医者さんに言われる」と言う。近隣には福祉科をもつ高校がある。その実習生たちを受け入れる時は、「笑える職場だから楽しんで」と励ましている。

介護をする家族には「親の世話は大切だが、、、、、、、、

2024年07月14日号 04面掲載記事)