日本キリスト教会出版局主催の「カルト問題と教会」の講演会が6月30日、日本キリスト教会大阪西教会で開かれた。対面の参加者約60人、ウェブ参加者が80人を超え、多くの反響があった。

会場の様子

講師は齋藤篤牧師(日本基督教団仙台宮城野教会)。若き日に、エホバの証人にはいってしまったが、クリスチャンの同級生とその母親からの優しい言葉が、後に脱会する支えになったという。脱会後に神学校で学び、牧師となり、今は各地で自分の体験に基づいてカルトについて講演している。


齋藤氏

日本キリスト教会は、国内に四中会(北海道、東京、近畿、九州)、教会・伝道所合わせて132からなる長老制の教会として一団の教会を表明している。古代信条および信仰告白を、「教会の信仰を聖書へと導く従属的規範」とし、歴史の中で改革され制度が整えられてきただけに、「自分たちがカルトになることはない」と漠然と考えていた面もあったのではないか。

しかし、2022年7月の安倍晋三元首相銃撃事件をきっかけに、統一教会の多額な献金問題が明らかになった。出版局は、日本キリスト教会がカルトの問題について理解が乏しかったのではないかとの危機感から、月報「福音時報」に齋藤牧師の記事を連載し、カルト問題を考えるきっかけになることを願い、講演会の開催に取り組むことになった。

齋藤牧師は、カルトを「ゆがんだ支配構造」と定義する。人間のゆがみの故に、被害者になる可能性だけでなく、自分が加害者になる可能性すらあることを指摘する。それは伝統宗教であっても、一般社会においても、パワハラ、セクハラ、DV、幼児虐待など、あらゆる領域で「ゆがんだ支配」が見られる。その根底に、期待と甘えが混在する不健全な「依存関係」があると、齋藤牧師は分析する。


左から、司会の吉平氏と、長谷川、中川、山本の各氏

講演会後半はパネル形式で、3名のパネリストが職場や教会の現場から考えを述べた。長谷川洋一長老(池田教会)は大阪女学院理事長として、若い学生が学ぶ教育の現場で、「知る力と見抜く力」を身に着けることの大切さを強調した。中川眞知子長老(宝塚売布教会)は、齋藤牧師の共著『わたしが「カルト」に?』(日本キリスト教団出版局)を読む前と後で、カルトへの考え方が変えられたと述べた。カルトと関わりがあるからと聞いて、警戒したり避けたりするのではなく、救いを求める一人の来会者として接していきたいと語った。山本盾牧師(岐阜教会)は、教師も「ゆがんだ支配構造」に陥る危うさを持つだけに、交わりを深め、教え合い、励まし合うことの必要性を語った。

齋藤牧師は、カルトの誘いは「風呂の水に赤インクを一滴ずつ垂らすようなもの」と、影響の緩やかさをたとえた。とするならば、毎週1時間少々の礼拝で、賛美と祈り、み言葉の養いを受け、聖霊に導かれて生きる生活が、キリスト者にとって、大切なものを知る力と見抜く目を養うことになるのではないか。

(レポート・吉平敏行=香里園教会牧師、出版局)

2024年07月21日号 02面掲載記事)