【特集 視覚障がい者と教会】 私なりの方法で出来る
秋山牧師と深澤さん
特集 視覚障がい者と教会
すでに視覚障がい者がいる教会であれば、配慮が可能だとしても、そうでない場合、事情を知らないがゆえに、視覚障がい者が過ごしづらい環境となっているかもしれない。コロナ禍をへて、オンライン技術による礼拝、集会が広がった。それら技術の使い方も視覚障がい者と晴眼者では異なる。視覚障がい者と共にある教会のために何が大切になるか。
生まれつき視覚障がいのある深澤和子さんは、所属するバプ連盟・上尾キリスト教会(埼玉県上尾市)で、執事や礼拝司会・奏楽など様々な奉仕に携わる。定年まで仕事をし、娘、孫と共に礼拝に出席している。「出来ないこともあるが、他のことで出来ることがある」と話す。同教会の秋山信夫牧師と、視覚がいと教会について語り合った。【高橋良知】
勝手に判断せず、まずは当事者に聴いて欲しい
長野県安曇野市の医師の子として生まれた父親が、宣教師のたてた横浜訓盲学院の働きに感動し、深澤さんは同学院に入学した。さらに埼玉県の学校に進学したが、「賛美歌がないので物足りず」、教会に通い、洗礼を受けた。
針灸(はりきゅう)、あんまの資格を取得したが、卒業後は電話交換手を志望。電話交換取扱者は当時まだ電電公社が許可する国家資格だったので、その資格を取るために、大阪の施設に入所して2年間訓練を受け、資格を取得した。その後、埼玉県庁をへて埼玉県総合リハビリテーションセンター(上尾市)に勤務。結婚を機に同市に引っ越した。
「教会は誰でも行っていい所。安心して訪ねることが出来た」と振り返る。「関係ない人をつくらない、という姿勢が良かった。変な配慮はせず、遠方の集会でも『行きますか』と聞いてくれた。奉仕依頼でも、勝手に判断せず、まずは当事者に聴く姿勢が大事」とアドバイスする。
他地域の教会を応援する伝道隊や東日本大震災の被災地支援活動にも出かけた。マッサージが仮設住宅の人に喜ばれた。現在は、定期的に地域のデイケアでマッサージの仕事もしている。
近年はスクリーンで画像や動画が投影されることもあるが、「脇でナレーションしてくれて助かる」。外部の集会などでは、「延々とBGMだけが流れて、拷問のような時間でした」と苦労も話す。
深澤さんはオンラインで神学校の公開講座を受講している。課題は、参考文献の入手だ。点訳や音訳のない書籍も多い。「先日は著者の別の本を図書館で郵送してもらった。自宅から郵送して返すのもなかなか大変」と言う。
日本盲人キリスト教伝道協議会の理事、埼玉県の集会の会長でもある。「『教会あるある』の悩みも分かち合うなど励みになっている」と言う。「視覚障がい者がキリスト教に触れる機会は減っている」という実感がある。「かつては公立の学校でも先生や先輩が、教会に誘ってくれたが今は難しい。今はなるべく地域で暮らす方向となり、良いことだが、寄宿舎でのかかわりが減った。若い世代は点字を読めない人も多く、案内方法が異なってきた」と話す。
一人ひとりの個性を受け入れることを重視する時代に
秋山牧師は、「かつては多くの人に同じものを届けることが重視されたが、今は、一人ひとりの個性を受け入れることが大事では、、、、、
(2024年07月21日号 05面掲載記事)