基礎の浸食を防ぐ 神、人、被造物の関係性で 第四回ローザンヌ世界宣教会議への旅⑩
第四回ローザンヌ世界宣教会議(9月、韓国仁川、オンライン)に向けて、毎週配信中の「ローザンヌ運動ポッドキャスト」(URLlausanne.org/podcast-series/lausanne-movement)から主要な論点を紹介する。第30~32回(4~5月配信)は再び「大宣教命令の現状報告」(以下「報告」、URLlausanne.org/report)について(連載4、6回参照)。「報告」ディレクターのマシュー・ニューマンさんと専門家たちが語った。
前回
第30回配信は「持続可能性」について。「報告」では健康、教会、被造物ケア、債務などの内容を取り上げた。ニューマンさんは「前進する活動に集中しすぎて、基礎が侵食されていることに気づかず、床が崩れる可能性がある。持続可能性を管理することは神による成長の重要な部分」と述べた。
OMFインターナショナルの被造物ケア提唱者のジャスミン・クォンさんは、環境保護と区別し、「被造物ケアは、関係性をより重視したい。愛が中心であり、私たちと神、被造物、の関係性が大切」と述べた。「報告」については、環境危機の地域的偏りを問題視。「私たちはこの共通の家を共有する責任がある。個人的な欲求だけではなく、すべての被造物について考える必要がある。小さなことから始めましょう」と勧めた。
第31回配信は「希望」について。「報告」では、イスラム教と世俗主義に重点を置きながら、世界の宗教だけでなく、より広範な世界的関心と価値観を検討した。1900年から2050年の推計では、キリスト教、仏教、ヒンズー教の増加率は横ばい。イスラム教だけが、大幅に成長し続けると予測する。他宗教への改宗以上に「無所属」が多いという。ニューマンさんは、「宣教は新しい人だけでなく、人々が去る『教会の裏口』についても懸念したい」と語った。
今回はフロンティア・フェローシップの中東宣教コーディネーターでエジプト在住のサーワット・ワハバさん。エジプトで教会の迫害がある中、遺族が発した「赦します」というメッセージが社会にインパクトを与えたという。
「報告」について、「希望は移民とディアスポラ」と言う。「福音を聞くのが困難な母国から解放され、クリスチャンと出会う」と期待した。
イスラム教へのクリスチャンの誤解についても語り、最大の課題は「イスラム教への恐怖」と指摘した。「恐怖は愛に反する。希望と愛と平和のメッセージを伝えたい」と励ました。 第32回配信は「正義」について。「報告」では、貧困、迫害、人権、障害者の機会、奴隷制度、汚職、女性の全員参加などの内容を紹介。ニューマンさんは、「一部の分野では改善が見られたが、実際にはやるべきことは多い。御言葉全体の理解と社会的行動の両方が大事」と勧めた。
ラテンアメリカで神学教育にかかわるルース・パディヤ・デボーストさんは、大宣教命令と正義の関連について「正義とは、物事が互いに正しい関係にあること。神、隣人、他の被造物との関係すべてにおいて。これは宣教の全体的な定義となる」と言う。
「報告」について、デボーストさんは「加速、前進、測定、王国、影響といった言葉は植民地征服のように感じた。神の統治と正義についてもっと謙虚な態度を取り、ボトムアップで取り組みたい。人種差別、気候正義、キリスト教シオニズムの問題が欠落している」と指摘した。
ラテンアメリカにおいて、社会的不正への応答として、「解放の神学」とともに、聖書に忠実な立場で起きた「ラテンアメリカ神学フェローシップ」についても紹介した。【高橋良知】
(2024年09月08日号 07面掲載記事)