コミュニティー崩壊、担い手不足、は地方の抱える課題だが、既存の宗教団体の課題でもある。『次世代創造に挑む宗教青年 地域振興と信仰継承をめぐって』(川又俊則・郭育仁編、ナカニシヤ出版、2千970円税込、A5判)は、仏教、神道、講など、日本の伝統信仰共同体「内部」の「次世代教化システム」を分析。従来の通過儀礼や年中行事のかかわりだけではない、在り方を探る。新宗教やキリスト教にも目を向け、サード・プレイス(第三の居場所)機能、コロナ禍におけるハイブリッド化、多言語性・多民族性を考察する。単に伝統信仰共同体が修復するのみならず、新しい信仰共同体の存在が、「内外の結節点」となり、地方の閉塞を打破する可能性に触れる。


原発事故により、一時期は、住民が消えた福島県沿岸の町にある教会が、「内外の結節点」になっている。『心折れる日を越え、明日を呼び寄せる』(小高夏期自由大学事務局編集、ヨベル、千430円税込、新書判)では、教会を会場に、復興やまちづくりの担い手、起業家たちが語り合う。同教会は元々近代化や社会運動の拠点であり、付属幼稚園が親しまれてきた。討論は、被災と避難、創造的な「再生」に及ぶ。戦争やAI問題などによる不測な状況においても、「つくりたい未来を共に作る」意気込みを見せた。後半では、問題の背景となる原発事故と「犠牲のシステム」に論を深め、倫理的課題にも目を向ける。

 

宗教は本来の役割を果たせるのか。『差別する宗教―インクルージョンの視座からの告発』(鈴木文治著、現代書館、2千530円税込、四六判)は、キリスト教、仏教の「加害」に切り込む。著者は牧師であり、障害者教育の専門家だ。仏教の「因果応報」やキリスト教の「口での信仰告白」がもたらした障害者への差別や排除を現場で経験。それらの教理解釈、排除の歴史をたどる。加害の極致、戦争責任も追究。「福音派」「社会派」双方の限界も指摘し、個人主義にも権力批判にも偏らない「インクルージョン」の在り方を提示する。厳しい言葉が続くが、最後の「共生の言葉」は喜びに満ち、「深い反省」と「出直し」への歩みを励ます。

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