寄稿・佐藤岩雄=カンバーランド長老教会 ルイビル日本語教会牧師

Czapp Árpádによる写真httpswww.pexels.com

1月20日、ドナルド・トランプ氏の第47代米国大統領就任式が執り行われた。就任前から米国国内のみならず、世界情勢にも影響を与えている。キリスト者はどのように祈り、これからの世界に向き合うか。米国のカンバーランド長老教会ルイビル日本語教会牧師の佐藤岩雄さんが寄稿した。

 

私はアメリカで日本語教会を牧会する牧師です。米国南部に居住する一人の信仰者の視点で、2025年1月20日に屋内で行われたドナルド・トランプ大統領の第二期の就任式について書かせて頂きます。

お伝えしたいことは二つあります。一つは、この大統領就任式が、アメリカという国家が大切にしてきた「礼拝」の形を映していること。もう一つは、アメリカに住む多様な人々、特に日本人や日系人への宣教の働きがこれからも整えられるよう、祈りをお願いしたいということです。

 

 アメリカが大事にする「キリスト教」

 

米国の大統領就任式は、祈祷、賛美、スピーチ(説教に近い部分)、最後の祝祷など、キリスト教会の礼拝形式をそのまま反映しています。国家行事でありながら、聖書に手を置く場面を含め、日本人には驚くほどキリスト教的です。今回のトランプ大統領の就任式では、福音派のフランクリン・グラハム牧師が登壇したほか、ローマカトリックやユダヤ教の指導者も神のみ名によって祈祷を行いました。この礼拝式は、就任する大統領によって特色は変化しながらも、祈りと聖書を象徴としており、アメリカが何を大切にしてきたかを示しているように思います。

私の友人の中には、トランプ大統領に強く共感し支持する人もいれば、その言動に戸惑い、批判する人もいます。ただし、様々な立場がありながらも、そこに共通して感じるのは、アメリカ人クリスチャンの多くが、キリスト教の影響力によって社会や国家が変化していくという前提を信じていることです。そのため、若者も含めて自分たちの信仰共同体と社会の関わりについて真剣に語り合い、議論します。国家とキリスト教の関わりを話し合う際、アメリカでは分析的で客観的であると同時に、感情的なまでに経験的・主観的である場合もしばしばです。

トランプ大統領は、こうしたアメリカのキリスト教文化を理解しながら活動しています。トランプ氏が推奨する記念聖書(God Bless the USA Bible)には、旧新約聖書のほか、米国独立宣言や憲法が収められています。この合本については福音派の中でも意見が分かれていますが、アメリカという国家とキリスト教の結びつきをよく表しているように感じられます。

 社会変革の力ある

キリスト教は、国家の成立ちに深く根差し、国民の良心を支え導き、時として為政者に利用されながらも、キング牧師が主導した公民権運動などに見られるように社会を変革してきました。これは時の政治権力が変わっても受け継がれ続ける、福音の力を証するものでしょう。 私はまた、この就任式の月に、ワシントン大聖堂で国葬が営まれたジミー・カーター元大統領の生涯を思い起こします。彼は退任後も紛争地での対話に尽力し、ノーベル平和賞を受賞しました。その後も90歳を超えてジョージア州の教会学校で教え続けた姿勢は、多くのクリスチャンに模範を示しました。大統領経験者にカーター氏のような信仰の系譜が、これからも受け継がれていくことを願っています。
現代では、急速に変化するアメリカ社会の中で、キリスト教会が形骸化し影響力を失いつつあると言われます。そうであればこそ、福音を宣べ伝える教会の役割は変わることなく、むしろその重要性は高まっていると感じています。

 

 米国地元教会と歩む日本語教会

私たちの日本語教会のある地域でも、日本語での宣教の働きは多くの実を結んでいます。働き人が限定されている中で、アメリカの兄弟姉妹や地元の教会が宣教の働きを熱心に支援してくださっています。また、日本への宣教の志をもつ若者が、多く起こされているのは大きな希望です。これからも、アメリカの各地で福音宣教の働きをしている日本語教会、日本語ミニストリーの働きのために、祈りに覚えて頂ければ幸いです。

 

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