メディアと社会で影響する 第四回 ローザンヌ世界宣教会議より ⑯
第四回ローザンヌ世界宣教会議(昨年9月)の内容を紹介。全体集会以外にも、連日の共同アクションや多様な分科会が開かれた。そこで聞かれた様々な声を届ける。
前回
〝ともに〟抜きの宣教は不十分 第四回 ローザンヌ世界宣教会議より ⑮
ローザンヌ運動の「課題ネットワーク」の一つ、「メディアへの取り組み」による分科会では、現代メディアへの対応が語られた。まず前回会議で出された「ケープタウン決意表明」ⅡA④から、メディアを批判的に受容する「メディアに関する意識」、一般ジャーナリズムで活躍する「メディアにおける存在感」、メディアを活用する「メディアミニストリー」という三つの視点を整理。「あらゆる教会が発信者となる中で、聖書の包括的な世界観を注意深く伝えたい」と話された。今回会議の「ソウル宣言」においては、「VIIテクノロジー」の項で、福音を土台として、ソーシャルメディアなどの健全な使用習慣、誠実な指導、弟子育成のための活用などを勧めている。
都市宣教とメディア関与による「創造的なプラットフォーム」構想も提案された。政治経済と社会文化の中心地である都市では、多文化、多民族、多言語の国際的な教会が宣教の基盤になる。「メディアが関与し、音楽、ゲーム、などメディア文化を貫く働きをしたい」と勧めた。同年10月にも韓国で、同ネットワークによるフォーラムが開かれ、多様な登壇者が語り合った。
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今回の会議を通じて新たに抽出された25の課題について、共同アクションとして、連日同じグループで分科会が開かれた。記者は2日目だけだったが「社会の信頼とキリスト教の影響」分科会に参加した。この日は、キリスト教の社会における影響力のリスクについて、各国からの声が上がった。
司会者は、①撤退、②同化、③支配、の「三つのリスク」を整理した。「①は文化から退行して、影響を与えない。②は公共の利益を気にし過ぎて、信仰さえも否定し、社会と一体化してしまう。都市宣教で知られるティモシー・ケラーが言及する③は、キリスト教が自らの意志を社会に押し付けているだけ、ということ」と説明した。
この後、三つのリスクについて参加者から応答があった。
【撤退について】「キリスト教宣教が200年続くが、信者は増えない。迫害はなく歓迎されているが、教会は非常に閉鎖的で、伝道せず、撤退している」(タイ)、「天国に行くことは大事だが、貧困、差別、搾取の現実について、教会が沈黙している」(南アフリカ)、「共産主義の遺産があり、政府は宗教的なものと非宗教的なものを区別しようとする。少数派宗教グループは職場に信仰を持ち込めない」(モンゴル)
【同化について】「国教会としての聖公会は、文化が期待するものと、聖書が実際に行っていることとの間で、苦闘している」(英国)、「キリスト教が流行っているが、教会に行くのが、クラブに行くのと変わらない。ダンスも音楽もあるので。信仰についてはオープンだが、影響力がない」(ナイジェリア)
【支配について】「宣教師が持ち込んだ西洋文化が優位。福音によって文化を救済するのではなく、文化支配をしていた。そのためキリスト教に対する反発が起きている」(インド)、「インド文化には、人種差別、女性差別があったが、神が私たちの文化を救済し、私のコミュニティーを変えた。宣教師は押し付けず、神の文化を与えた」(インド)
司会者は「撤退せず、同化せず支配することもなく文化と関わりたい。価値観を保ちつつ、預言的であり、支配的でなく、キリストへの道を示したい。風味を与えるだけではなく、腐敗も防ぐ〝塩〟となりたい」と励ました。(つづく)【高橋良知】
(2025年03月23日号 03面掲載記事)