キリスト者への問い

 本書は、2015年〜17年にかけて、日本キリスト改革派教会の2・11集会、および日本カルヴィニスト協会主催の講演会で語られた、キリスト者と天皇に関する4つの講演録です。

 私たちキリスト者は等しく、イエス様を「生ける神の御子キリスト」と告白して救われた者です。しかし、かつて教会は「イエス・キリストのみが唯一の神」と断言できずにキリストと並べて天皇を礼拝し、侵略戦争に加担してしまいました。その天皇の宗教的性格は戦後も変わっていないにもかかわらず、現在、皇室に対し好意を持ったり、現政権と同じような歴史認識を持ったりするキリスト者も増えつつあります。この混乱した時代の中、「あなたは天皇をだれだと言うか」と問われる時、実は「あなたは本当に主イエスのみをキリストと言うのか」と再び問い直されているのです。

 著者は、皇室神道は「偶像崇拝の宗教」であり、天皇は「異教の大祭司」だと断言します。ですから、代替わり儀式の頂点である大嘗祭によって神格化される天皇に対し、私たちが安易な尊敬の念を抱いたりすることは慎むべきです。天皇の本質と、日本の国と教会がたどった歴史を正確に理解する時、私たちが「自分たちの偶像を心の中に秘め、自分たちを不義に引き込むものを、顔の前に置いて」いないか、そして教会全体として、先祖の罪を自分の罪として真摯に悔い改め、謝罪しているか改めて考えさせられます。その上で「御言葉の正しい説教」と「聖礼典の正しい執行」によって神中心の礼拝がささげられ教会形成がなされるべきという、牧会の現場に携わってこられた著者ならではの宣教論が語られます。

  「天皇はキリスト教徒となりうるか」(第2章)、「近代日本のカトリックとキリスト教」(第3章)と興味深いテーマにも触れられており、代替わりの年を前にぜひ読んでおきたい1冊です。

 ただ、註が文中に括弧で、非常に小さい文字で挿入され読みづらさを覚えます。巻末か章末に脚注をまとめていただけると良かったと思います。

評・柴田智悦=日本同盟基督教団横浜上野町教会牧師

『キリスト者への問い あなたは天皇をだれと言うか』

松谷好明著 一麦出版社 1,836円税込 B6判

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