2月23日号紙面:各地で2・11(信教の自由を守る日)集会 日本国憲法の枠組み立憲主義が危ない 福音の希望にとどまるために 日本キリスト改革派西部中会2・11集会
各地で2・11集会 日本国憲法の枠組み立憲主義が危ない 福音の希望にとどまるために 日本キリスト改革派西部中会2・11集会
日本キリスト改革派西部中会世と教会に関する委員会主催の2・11集会が、神戸市灘区の神港教会で開かれた。講演は弁護士で大阪教会の常石和美さんによる『福音の希望にとどまる』。同委員会委員の高島潤さんの司会で進められた今年の集会は、西部中会の中高生会「アクト神戸」の中高生たちにも参加を呼びかけて、冒頭は若い世代と共に信教の自由を考えるときとした。
常石さんは初めに若者たちに向けて「今日こうして大人が集まっているのは、政治や憲法の話が大好きだからというよりも、信仰を守りたい、福音をしっかりと受け止めて生きていきたいと思っているからです」と、語りかけた。
「政治と宗教って別にそれぞれが自由にやっていればいいんちゃうん、と思うかもしれません。でも、第二次世界大戦のときには、クリスチャンも神社参拝をしたり、他の人に参拝を押し付けたりしたことがありました。大事なことは、いつも聖書に戻り、神様に教えて頂くこと。そして、昔何があったのか、今の世の中はどうなっているのかを、聖書の光に照らして見ることです」
憲法改正や個々の政策等について「賛成か反対かは、それぞれが信仰に基づいて判断すればいいという声はあります。もちろん押し付けるものではありません。でも、それを自由に考える前提自体が危うくなっているのではないでしょうか。この国を支える枠組みの根っこのところから変わってきて別の方向に行こうとしている。それが私たちの信仰と関わっていると思うのです」と、前置きした。
「天皇の代替わりもあり、新しい時代にふさわしい憲法を、という声があります。そもそも変える必要があるのか、どういう理由でどこを変えるのか、変えたらどうなるのか、それらを丁寧に見ていかなければなりません。特に今の憲法の枠組みの中での改正なのか、枠組み自体を変えてしまうとすればその新しい枠組みとはどんなものか、ということは大切です。今の憲法の枠組みは、立憲主義です。憲法は国民の利益を守るために国家権力を縛るものであるという考え方です」とし、弁護士の楾(はんどう)大樹さんの著書『檻の中のライオン』(かもがわ出版)を引用しつつ、説明した。同著は、動物たち(国民)が、檻(おり、憲法)の中でという約束で、ライオン(国家)に政治を任せるという例え話だ。その上で、閣議決定で集団的自衛権を認めたことや特定秘密保護法の制定、9条の2の加憲案や緊急事態条項を盛り込んだ改憲4項目のたたき台に触れ、政策の問題以前に立憲主義自体が軽んじられつつあるのではとの危惧を示した。安倍首相が語った「立憲主義はもう古いのではないか」との考え方は、社会全体にも広がりつつある。
「立憲主義は長い歴史の中で大きな反省の上に作り上げられてきたものです。社会全体が雪崩を打つように危ない方向へ進んでしまわないためのストッパーです。もう古いと言って手放していいのでしょうか」
「戦争は若者にとって教科書の中の出来事となり、その悲惨さを知る人も少なくなりました。70年以上も前の死んでしまった人たちの決めた政策に、何で従わなくてはならないのかと言う人もいます。しかし、過去をどう捉えるかは、将来をどう考えるかと深く繋がっていると思います。戦時下のキリスト教会がどうであったかを知り、どうしてそうなったかを考えることが、これからどうするかにつながるのです」
そして、戦時下のキリスト教会の言動から、福音の本質が国体に沿うように歪められた様子を示し、また森派と呼ばれるグループの信徒に対する取調べの内容を紹介し、国家が信仰の内容に干渉することの恐ろしさを訴えた。
今の憲法改正の方向性は、天皇を戴(いただ)く国であることを強調し、我が国の歴史や文化や伝統を大切にするという理想を掲げながら、人権や政教分離規定の性質を変えてしまうものではないか、と指摘した。
「自然や文化や伝統を大切にし、愛すること自体が問題なのではありません。けれどもそれらを日本人としてのアイデンティティや自信と誇りの根拠とすることは、十字架の入る余地をなくしてしまうのではないでしょうか。人間のどうすることも出来ない罪を解決するのはキリストの福音だけです。イエス様は誇りとは正反対の惨めな姿で私たちのために命を捧げて下さいました。ここに私たちが本当に誇るべきもの、希望があるのです」
最後に「戦時中がそうだったように、初めは気付かないような変化から、やがて止められない流れになり、信仰の自由が制限される方向に向かうことがあり得ます。私たちの信仰そのものが揺らいでしまうおそれすらあります。複雑で困難なこの時代に、私たちは福音の希望にとどまることを祈り求めなければなりません。そのために、みことばに神の導きを求めつつ、今できることをやっていきましょう」と、呼びかけ「御声を正しく聞き取り、主に従って生きていけるよう導いて下さい」と、祈りを捧げた。【藤原とみこ】