[レビュー2]「未完」となった歴史を知る責任 『未完の独立宣言 2・8朝鮮独立宣言から100年』
「未完の独立宣言」、このタイトルの「未完」の意味をどう考えるだろうか。「独立宣言」とは、朝鮮人留学生たちによって作られ、1919年2月8日に東京において決議された宣言のことでこの「独立宣言」が「未完」というのだ。「えっ? 独立宣言は未完なもの?」、こう思うかもしれない。そう、そこにこの本が書かれた意図がある。
「独立宣言」には、「ここにわが民族は日本および世界各国が、わが民族に民族自決の機会を与えることを要求する」とある。しかし、今の時代を鑑みるとき、日本は朝鮮民族の「自決」を本質的に認めているのかと考えざるを得ない出来事が頻発している。それが、「戦後補償は解決済み」として、韓国人元徴用工への補償や、軍慰安婦とされた方々への謝罪に背を向ける日本政府の姿勢にあらわれている。
2020年2月17日に、韓国・ソウルで一つの集会が開かれた。「朝鮮学校(ウリハッキョ)問題 韓日共同シンポジウム」である。高校の授業料無償化が進む中で、朝鮮高等学校は無償化の対象校から除外されていることを、同胞である韓国の方々に知っていただくことを目的に開催された。長くこの問題に取り組んでこられた2人の日本人と、実際に朝鮮学校で学んだ1人の大学生が、それぞれの立場で発言してくださった。このシンポジウムで明らかになったことは、問題の根底にあるのは在日韓国人朝鮮人へのいわれなき差別の存在だった。多くの在日外国人学校が無償化の対象校と指定される中で朝鮮人学校だけが、なのである。このシンポジウムに加わる中で、1910年の日本政府による朝鮮半島の強制併合以降の歴史を学ぶ必要を、改めて強く感じた。
「もし、そうならなければ、わが民族はその生存のために自由行動を取り、わが民族の独立を期成することを宣言する」で宣言は終わる。この宣言を未完としているのは日本の責任であることを痛感する。そして、この本「未完の独立宣言」は、まさにこの歴史を私たちに知らせる大切な本であることを思う。
(評・飯塚拓也=日本キリスト教協議会東アジアの和解と平和委員会委員長)
『未完の独立宣言 2・8朝鮮独立宣言から100年』 在日本韓国YMCA編、 新教出版社 2,500円税込、四六判
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