日本の精神性、土壌は歴史の中で形成され、継承されたものと、変化したものがある。『日本人は何を信じてきたのか−クリスチャンのための比較宗教講座』(勝本正實著、いのちのことば社、千430円税込、B6判)の著者は牧会と同時に、仏教学、神道学を学んできた。民族宗教、神道、仏教に加え、カトリックやプロテスタントの宣教姿勢も振り返り、新宗教まで目を向ける。平易な書き方だが、単純化はせず各宗派に学ぶ謙虚な姿勢がある。その上で、戦前の天皇制、靖国問題、宗教法人の課題に触れる。

 

 キリスト者として日本人の精神性、文化に迫ろうとする試みは戦前に懸命に取り組まれた。「キリストの他、自由独立」を掲げ、友情と共助を重視した基督教共助会は昨年発足100年を迎えた。創設者森明の信仰、人格、思想に注目した著者が相次いだ。『基督教共助会100 周年記念:恐れるな、小さき群れよ —基督教共助会の先達たちと森 明』(基督教共助会編、基督教共助会出版部:発行 ヨベル:販売、千300円税込、四六判)では、森の人格に触れた人々の声と、その後の生き様が表れる。森は、キリスト教と文化の問題、世界主義と愛国心の問題を追究してきた。『森明著作集 第二版』(基督教共助会、基督教共助会出版部:発行 ヨベル:販売、千650円税込、四六判)は、膨大な知識で考察された宗教論、生命論、宇宙論、哲学、国家観がある。堅実な取り組みながら、森に続く共助会は、皇国史観に飲み込まれた苦い歴史がある。その一端は、森やその後輩たちの文章に垣間見られた。先例とその結果に学びながらこの国に生かされたキリスト者の意味を、宣教方策とともに考えたい。

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