昨年の12月から中国武漢市を中心に広がっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大にともない、キリスト教界でも超教派の集会が中止になるなど、影響が広がっている。日曜礼拝を始め多数の人が出入りをする教会でも対応を迫られている。感染症対策が専門で、厚生省(当時)健康政策局で災害医療など様々な危機管理事案を担当し、現在岡山大学大学院医歯薬学総合研究科特命教授の土居弘幸氏に聞いた。

 

-今後、感染は拡大に向かうのか、収束に向かうのか。どれくらいの期間が予想されるか。

予測については現時点では難しく、多くの感染症専門家は大流行の危険性を指摘しています。

 

-教会としてどのような対応、対策をとるべきか。特に日曜礼拝に際して。教会の規模、都道府県、地域(都市部、地方など)、教会員の年齢、などによって対応は変わるか。

現在政府は、大流行の山を可能な限り低くし、流行のピークを先へ延ばそうとしています。これは、1918年のスペイン風邪が大流行した際の、米国フィラデルフィアとセントルイスにおける対策の違いからの教訓に基づくものです。セントルイスでは、大勢が集まることを禁止した結果、死亡率を大幅に下げることが出来ました。しかし規制を緩和すると僅かに増加しました。

資料

この教訓に学ぶならば、大勢が一堂に会する礼拝は、感染症対策上、好ましくありません。特に会堂が人で満たされる教会では、大小にかかわらず避けるべきでしょう。

もう一つ重要なポイントは、教会への交通手段です。公共交通機関の使用は避けるべきです。徒歩・自転車・自家用車を使用することに限定すべきと考えます。

教会でも、全員マスクを使用し、一定の距離を置いて着席する必要があります。マスクを着用していれば2メートル以上飛沫は拡散しません。この距離が目安となります。特に膝を寄せて祈り合うことは厳禁です。食事も飛沫感染の機会を増やしますので愛餐会も中止が望ましいでしょう。その他、コロナウイルスは便にも排出されるので、おしりの温水洗浄器も厳禁です。感染防御の工夫はネット上にありますので、ご参照ください。

 

-このような対策をどの時点でとるべきか。

一番悩むのは、どのタイミングで上記の行動制限を開始するかということです。政府はすでに同様の方針を示していますが、日本全体ということではありません。「市中感染」に注意すべきです。感染経路が不明の感染者が発生した場合を市中感染と言います。教会が立地する地域(区、市、郡)、教会員が在住する地域(区、市、郡)で市中感染が報されたならば、直ちに前述の行動制限を行うべきでしょう。遅くともこのタイミングです。都道府県、都市部・地方に関係ありません。郡部であっても、観光地で観光客が多い町もあります。

COVID-19は、高齢者の重症化率・致死率が高い特徴がありますので、高齢者の外出は要注意です。上記の行動制限を厳重に行う必要があります。

感染防御について、感染を防ぐ方法を遵守することも大切ですが、自分が万が一感染している可能性を想定した行動がより重要です。自らが感染源とはならない工夫を教会員全員で考えることが肝要です。

 

-礼拝の休止も考えるべきか。

公衆衛生の観点からは上記の説明で明白です。それよりも、主の視点が重要です。礼拝とは何か、教会とは何か、もう一度原点に戻り、主のみ声を聴くことこそ重要であると思います。単に礼拝の持ち方の問題ではないと思います。互いに愛し合うとはどういうことなのか。今こそ、教会員、新しく来た人たちに対して、どういう礼拝を守り続けるのか、主に聞くべきです。やがて感染は収まるでしょうが、終わったからもう安心、というのでは的外れでしょう。こういう困難の中にあって礼拝を守るとはどういうことなのか、感染が収束した後も、神様に聞き続け、礼拝そのものが変わることを私は期待します。

 

-超教派の集会など、1教会の規模を超えた集会、イベントなどはどう考えたらいいか。

やはり市中感染の広がり具合が参考になります。国・自治体や公的機関の対応と横並びで良いと思います。後々のことを考えますと、教会や教会関係の集会が感染源となった場合、社会からの強烈な批判は必至です。

 

参照ホームページ

・国立感染症研究所

・日本環境感染症学会

 

対策指針等を公表した団体

・カトリック東京大司教区

・日本聖公会

・日本基督教団