店頭の社会的影響 「本屋」の存在意義②

【書店】本を販売する小売店

【本屋】本を売る人たち

「差別・憎悪を助長する」

 本屋に詳しいライターとして知られる永江朗さんが2019年末に『私は本屋が好きでした─あふれるヘイト本、つくって売るまでの舞台裏』(太郎次郎社エディタス)を出版し、書店業界に波紋を呼んだ。「ヘイト本」を制作する著者、編集者だけではなく、流通させる側の責任も問うものだった。書店員などからは賛否両論が出たという。

 この出版を記念する連続トークセッションが今年、1〜2月に3回にわたって開催された。主催会場となったのは絵本と子どもの本の専門店「教文館子どもの本のみせナルニア国」。国内外の良質な児童書、絵本が並ぶ店内には、「ヘイト本」が置かれる余地は一切なさそうだ。そもそも高級ブランド、百貨店、老舗専門店が並ぶ銀座という町に「ヘイト」は似合わない。だがそんな銀座でも、2013年ころには、「ヘイトスピーチ」が吹き荒れたこともある。

 永江さんは、「ヘイト本」という呼び方も「便宜的」として、「正確には『差別を助長し、少数者への攻撃を扇動する、憎悪に満ちた本』と呼びたい」と言う。何かを批判し、攻撃する本が、すべて『ヘイト本』となるのではない。政治思想の問題でもない。「その人の意思で変えられない属性−性別・民族・国籍・身体的特徴・疾病・障害・性的指向など−を攻撃することば」が問題なのだ。

 とはいえ、ある本が「ヘイト本」なのか政治を論じる本なのかの線引きは難しい場合があることは認める。永江さんは、中身以上にタイトル、表紙の問題を指摘する。「店頭に並んだときの社会的な影響が大きい」

 嫌韓、嫌中本、雑誌を購入するのは70代くらいの男性が多い。「ネトウヨ」に該当するような排外的な思想をもった比較的若い層が購入することは少ないらしい。、、、

4月19日号に全文掲載