写真左上=ペダル式消毒器 右上=フェイス・シールドを着用した
スーパーの店員が、入店前に検温し手の消毒促す


写真上=買い物客が交差しないように床に矢印

 タイは5月18日現在、感染者数3千31人、死者数56人。感染者数は減少傾向で、対策の効果が出てきているという。タイ・ミェン族宣教師の有澤達朗さんのレポートを届ける。

 タイ初の感染事例は、1月13日に検査結果が出た武漢からの中国人だった。3月からの感染拡大は、バンコクのルンピニ・ボクシング場での試合が原因。観戦者が感染者になった。するとバンコク脱出ラッシュが起きた。モーチットという巨大なバスターミナルは、北部や東北へ帰省する群衆が押し合いへし合いの状態だった。プラユット首相はその映像を見るや、非常事態宣言を発令。3月26日のことだった。
宣言と夜間外出禁止令は5月末まで続いており、対策の効果が出ている。新規感染者のピークは3月22日の188人で、5月4日に18人を記録した後、一桁が続き、本稿を書いている5月16日はゼロ。
 成果の遠因の一つは、国民がクーデター慣れしており、非常事態宣言に伴う諸措置によく従う素地があるからではないだろうか。1932年の立憲革命以来、成功したクーデターだけを数えても13回。最近では2006年と14年に戒厳令が出た。
 近因は、広報がわかりやすいこと。新型コロナウイルス対策本部(CCSA、本部長は首相)の医師であるスポークスマンが毎日約1時間の報告をする。このハンサムな医者がグラフをふんだんに使い、最新基本情報(新規感染者数等)に加え、14日間隔離中の感染者数、世界各国の感染者数の状況、その中でのタイの順位(5月16日現在69位)、守るべき5項目(手洗い、マスク着用、2m間隔、テーブル・カウンターなどの消毒、密集を避ける)の遵守度と違反件数、違反行為の内訳、帰国希望タイ人が在留国によってどのくらい待たなければならないかの情報、外国の取り組みから学ぶべきこと、等々を、ニュースアナウンサーよりゆっくりめに伝える。「グラフをご覧ください。うれしいですね、賭博(の違反件数)は60件を下回りました。住民のため安全な距離を保ちましょう」とにこやかに(この日は全国約18万個所パトロールのデータからグラフを作成)。また「臭いがしない!? と気付いただけでもすぐに保健所の無料検査を受けてください」と、不安を抱かせないよう奨励している。
 筆者の奉仕するチェンライ県山岳地方のミェン族諸教会も、3月から礼拝休止、スマートフォン(以下・スマホ)によるオンライン説教、スマホに慣れない年齢層は役員やセル・リーダー宅で窓を全開し、5人くらいの礼拝をしている。牧師を辞めビジネスを始めていた人が、消毒用アルコール・ジェルとマスクをミェン族がいるほぼすべての県のクリスチャン家庭に配布した。雨期に悪路で下界との交通が遮断される高地の村では、外部者が全く入村しないと分かっているので、礼拝を継続している所もある。市街地にある一つのミェン族教会は非常事態宣言発令後も大人数の礼拝を続け、県の役人から注意を受け、中止した。
 【祈りの課題】
 ①5月17日からの対策第二期のため。CCSAがオンライン・プラットフォームを開設し、国民の80%に普及しているスマホを通じて来客密集店舗の把握とクラスター追跡の徹底を図る。こうしながら社会経済活動を段階的に再開する計画だ。第二波が起こらないようにお祈りを。
 ②タイの教会が祭司としての召命を自覚し、身の回りの個人的なことだけでなく、国全体のため、(上記スマホ個人情報の適切な保護管理を含め)為政者のため、執り成しの祈りをするように。


写真左上=CCSAスポークスマン、タウィースィン・ウィッサヌッヨーティン医師。
写真右上=CCSA記者会見で質問を終えるたび、次の質問者のためマイクを消毒