コロナ禍に対応し、多くの教会でオンライン導入など工夫をしているだろう。教会のコミュニケーションに新たな可能性が見えたところもあるだろうし、様々な不便を抱えて試行錯誤しているところも多いに違いない。その中で、牧師、信徒の関係性やケアが課題だ。教会に集まることが困難な中、牧師が様々な業務を抱え、判断をせざるを得ない場面がある。

『牧師・教会リーダーのためのメンタルヘルス 教職・信徒が共に歩むために(河村従彦著、いのちのことば社、千430円税込、四六判)は牧師の「しょいこみ過ぎ」をセルフチェックできるようになっている。人格的責任範囲や牧師と信徒のパワーバランスの理論なども具体的なエピソードを交え教会に適応して考えていける。キリストとの出会い方と人格形成は人それぞれであり、その中で人と向き合う方法を整理して勧める。

 『心の井戸を深く掘る 牧会者とカウンセラーの「魂の知」(坂野 慧吉・藤掛 明共著、地引網出版、千650円税込、四六判)は牧会について実践と共に、様々な発言をしてきた牧師と、その教会の信徒でありつつ、様々な牧会の課題に取り組んできたカウンセラー、聖霊派の編集者を交えた座談会の記録。牧師の仕事とカウンセラーの仕事を相互に聞き合い、牧師の召命から信徒との関係、教会の運営についても議論。カトリックや宗教改革、日本の宗教の歴史にも触れて、霊性や礼典の可能性も考えていく。

 『土の器なれども —講演・随想・召命—(賀来周一著、キリスト新聞社、2千420円、四六判)は、キリスト教カウンセリングの第一人者による講演や随筆。第一部講演ではスピリチュアルケア、高齢者、自死、心の病、人間関係、などについて心理学などの専門知識によって整理するが、具体的なエピソードや実体験がベースで読みやすい。第二部随想は、折々の時事に触れつつ、人間、信仰、教会について。第三部召命は、生い立ちから召命、伝道牧会活動について生き生きと語る。著者にとってキリスト教カウンセリングとは単なる手法ではなく生き様であり、牧師だけでなく信徒とともに実践するものだということが分かる。

 3冊は体系的な叙述、対談、随想とスタイルが違う。だからこそ合わせて読むことで気づきがあるだろう。

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