新型コロナウイルスは、人の命を蝕(むしば)むだけでなく、接触への恐怖が、より深く社会を不安に陥れ、互いの関係に溝を穿(うが)ち、「私たち」をバラバラな「私」へと分解し、隔ての中垣を作り上げています。

 教会内にさえも、癒えがたい傷を残しつつあります。それは死の力がほくそ笑む世界の現実です。「この世界に対して死の力を突破する復活の喜びこそ、語り伝えなければなりません。主イエス・キリストの復活をまともに信じる教会として…生きる希望と力をより高らかに宣言していかなければなりません」(185〜186頁)。

 主の復活を「まともに信じる教会」が、今こそなすべき務めは何か、断言するのです。死を含む何ものも、十字架と復活のキリストにある神の愛から私たちを引き離すことなど絶対にできない。恐怖で世界を支配し、あたかも神ででもあるかのように大手を振って闊歩(かっぽ)する「死」の滑稽さを笑い飛ばし(詩篇2篇)、愛するものを奪われて泣くものの傍らで涙を流し、死に対して怒る主を語り続ける教会が、今の世界にとって希望の礎、とりなしの務めの担い手であることを魂に刻ませるのです。

 この原点に立ち返らせ、立ち続けさせ、そして歩み出させる教会の信仰の足腰を鍛える書物です。なまった体に筋肉体操が話題ですが、死の力に覆われて弱り、よどんだ魂に復活の主の命の息吹、汲(く)めども尽きぬ命の泉を与え、健全な教えをもって真に人を生かすのは、教会の言葉に他ならないことを語る、まさに時宜にかなった書が出版されたことを心から喜び、神様に感謝します。

 教会の信仰の要である教理が、聖書から説き起こされ、聖書に沿って、聖書に促されながら、温かみを持つ凛(りん)とした語り口で、読むものを力づけ、信仰の背筋を正し整えるメッセージとして語られてゆきます。ですから、「教理」が慰めの言葉として聞こえてくるのです。「私」の信仰が「私たち」の信仰に連ねられて生きることの喜びと平安を噛(か)みしめています。

評・左近 豊=青山学院大学国際政治経済学部宗教主任・教授、日本基督教団美竹教会牧師

『喜びの知らせ  説教による教理入門』 朝岡勝著、 いのちのことば社  1,870円税込、B6判

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