[レビュー2]「使命」のためにマネジメントは不可欠 『教会のマネジメント 明日をつくる知恵』評・松本雅弘
『教会のマネジメント—明日をつくる知恵』は3部からなり、第1部は経営学者、コンサルタントの島田恒氏による「教会論から考えるマネジメント」、第2部は牧師、神学者である濱野道雄氏による「マネジメントから考える教会論」、第3部は「教会の明日を考える新たな視点」というテーマで著者たちによる対談となっている。
本書は、「『教会のマネジメント』……ちょっと違和感のある著書です。マネジメントとか経営とかいう言葉は企業のもの、教会とは縁がないもの、という違和感です。その意味では、この著書はその違和感を正して、教会にもマネジメントが不可欠であることを明らかにし、教会がミッション(使命)をしっかり実現することができるようにその方法を示そうという試みです」との書き出しで始まるが、マネジメントの歴史、社会背景を概観しつつ、組織マネジメントと神学を対話させつつ、読む者の心の中にあった「違和感」は次第に払拭され、教会のマネジメントの必要性へと心が開かれていく。
本書を読みながら、主イエスの語る「善きサマリア人」が心に浮かんだ。瀕死(ひんし)の重傷を負った人を助けるミッションを遂行するために、善きサマリア人にはその人を見て心を動かす愛に加え、具体的なニーズにこたえるための救急法の知識とスキル、宿賃を負担する経済力、予定を変更する寛容さやゆとり等、様々なものが備わっていたように思う。負傷した人への愛がどれほど強くても、助ける術がなければ、愛の思いは空回りするだけである。愛の心とそれを具現化する備え(本書でいうところの「マネジメント」)が両輪となって初めて、神からの使命は遂行されていく。
教会の働きに携わりながら、つい後回しにするのが、使命遂行に必要な一方の車輪−マネジメントであろう。教会マネジメントとは何か、なぜ必要なのか、どう進めるのかなど、明日をつくる知恵が満載の一冊。牧師、役員問わず、多くの信徒にお勧めしたい。
(評・松本雅弘=カンバーランド長老キリスト教会高座教会牧師)
『教会のマネジメント 明日をつくる知恵』島田 恒、濱野道雄共著 キリスト新聞社、1,760円税込、A5判
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