中国伝道において、「福音派」のハドソン・テーラーに対して、「社会派」と見なされた宣教師ティモシー・リチャードだが、信仰の背景は共通し、伝道への情熱に満ちていた。それは『中国伝道四五年 ティモシー・リチャード回想録』(ティモシー・リチャード著、蒲豊彦・倉田明子監訳、平凡社、4千180円税込、B5変)の監訳者が指摘することだ。伝道を模索する中で、災害支援をきっかけに政治とのパイプを持ち、中国の近代化をけん引した康有為らを励まし、孫文の「行き過ぎ」を注意し、官僚たちの人間性に合わせて巧みに交渉。原書刊行は第一次世界大戦中であり、現代の視点で見れば、情勢判断の限界や帝国主義的な態度など、目に付く点があるが、儒教、道教、仏教、イスラム教との対話の様子が詳しく記述され、アジア宣教の在り方を検証できる。


日本統治下の1928年に台湾で生まれ、米国を拠点に日本学をリードした著者による内と外の視点が興味深い。『日本宣教を阻む5つの障壁』(デイビッド・ルー著、いのちのことば社、千430円税込、四六判)では、キリスト者の先入観、日本における仏教、神道、儒教、ヒューマニズム、「政治的正しさ」の影響を指摘しつつ、他の宗教・思想から学べる点は評価する。台湾の神学者黄彰輝が強調した「文脈化」に注目し、宗教改革の五つの「ソラ」とビジネス分析ツールを用い、現代日本に合った宣教方策、教会開拓の在り方を提唱する。


キリスト教と西洋思想の有機的な関係はどうか。ルターやアウグスティヌスを軸に人間論、霊性論を切り開いた著者による『わたしたちの信仰 その育成をめざして』(金子晴勇著、ヨベル、千210円税込、新書判)は、所属教会などで話した講話集。平易で簡潔な語り口で、特に著者の青年時代に焦点を当て、東洋主義でも個人主義でもない、キリスト教の真理、正義、自由、愛を語る。

[レビュー1]多様性と幅を許容する聖書解釈―新たな議論の糸口に 『聖書を解釈するということ』評・山﨑ランサム和彦2020年8月29日

[レビュー2]『それでもあなたを「赦す」と言う』『新使徒運動はなぜ危険か』『聖なる教会を目ざして』『「死海文書」物語』2020年8月30日

[レビュー3]『今、礼拝を考える』『教会でも、がん哲学外来カフェを始めよう』『世界社会の宗教的コミュニケーション』2020年7月24日

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