「主の山には備えがある」を信じて 岐阜県下呂温泉いずみ荘  「終息したらまた行きます」と 国内外の利用客からメールが 長谷川純生、美幸夫妻

岐阜県下呂市の下呂温泉で旅館「いずみ荘」を営む若女将の長谷川美幸さん、夫で専務取締役の純生さん。美幸さんは、母親で初代女将の梶田静枝さんが始めた旅館を引き継ぎ、純生さんと二人三脚でいずみ荘を経営してきた。美幸さんは英語が得意で、英語が話せる若女将のいる旅館として、外国人観光客に人気があった。だが、新型コロナ感染拡大の影響で、利用客が激減。リピーターの外国人観光客も日本に来られなくなり、3月以降キャンセルが相次いだ。さらに7月には岐阜県の高山市、下呂市に豪雨災害が発生し、追い打ちをかけた。今後の見通しも全く見えない状況だ。だが、美幸さんは「『主の山には備えがある』(創世記22・14)の御言葉が救いですね」と話す。【中田 朗】

左から美幸さん、美幸さんの母・静枝さん、純生さん

下呂温泉は、江戸時代の儒学者林羅山が、下呂温泉を有馬、草津とともに「天下の三名泉」と称したことから、日本三名泉の一つとして知られている。泉質はアルカリ性単純温泉で、神経痛、筋肉痛、関節痛など、ほとんどの病気に効くという。
そんな下呂温泉にクリスチャン夫婦が経営する旅館があると聞いたので、夏のお盆の時期に訪問し、宿泊した。源泉が湧くお風呂は硫黄などが入っていないので、刺激臭が全くない。ぬめりを感じさせるようなお湯で、肌に優しい。「美肌の湯」と言われるゆえんだ。ゆったりお湯につかっていると疲れがどっと出ていくような感じで、何とも心地いい。
食事は飛騨牛やアユの塩焼き、アナゴが載ったそうめん、カボチャの煮物、ナスのお浸しなど、地元の食材をふんだんに使った日本料理だ。温泉でゆったりでき、美味しい料理も味わえる。ホテルにはないきめ細かなおもてなしも、宿泊客の心を和ませる。リピーターが多いのもうなずけた。

いずみ荘外観

そんないずみ荘だが、訪れた日の宿泊客は記者一人だけだった。この時期、例年なら猫の手も借りたいほどの繁忙期。「昨年8月の宿泊客はのべ約600人。連日大勢のお客様がありました。しかし、今年はのべ人数でも二桁になったかな、ぐらいでしょうか」と純生さんは顔を曇らせる。
美幸さんは「3月以降、ほとんどゼロに近い」と語る。「4月中頃に休業要請が出て、5月31日まで休業しました。例年ならとても忙しい5月のゴールデンウィーク中に仕事が全くなかったのは人生で初めてで、心が折れました。持続化給付金はもらえましたが、こんな状態で乗り越えていけるのかなと、眠れない日々が続きました」
休業要請が解除された6月以降も宿泊客は伸びなかった。7月には、国内における観光などの需要を喚起するため、政府主導で国内旅行の費用を補助する「Go To トラベル」が始まることもあって、23、24日の連休頃に利用客があるのを期待していた。だが、ちょうどその頃に豪雨災害が重なった。

天然温泉が湧くお風呂

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そんな中、支えとなったのが、いずみ荘を利用してきた国内外の人たちからのメールだ。「『お祈りしていますよ』『終息したら、また行きますよ』って。、、、、、、

2020年9月20日号掲載記事

 

 

 

 

 

飛騨牛、アユなど、地元の食材をふんだんに使った料理