バイデン大統領候補当選 選挙で見えてきたものとは 衝突する社会問題への対極のあり方

アメリカ ルイビル日本語教会牧師 佐藤岩雄

現在、新型コロナ感染が再拡大しています。先週末は一日あたりの感染者数の最高記録となり、かなり警戒が強まっています。そんな中、11月7日にジョー・バイデン大統領候補が当選確実との報道がなされました。今回の大統領選挙は多くの州でかなりの僅差となり、現在のアメリカの姿を映し出しているように感じました。
これは教会にも関係する潮流です。今、米国の教会は、経済格差、人種問題、移民への対応、LGBTQ(セクシャルマイノリティーの総称)を含むジェンダーの問題など、これまで以上に多様な課題の中に置かれています。その課題への対応で分裂している教団・教派もあります。選挙の中で見えてきたのは、米国の中で現実的な社会問題への対応として、対極に置かれた二つのあり方がぶつかり合っている実情ではないでしょうか。
私が、教会の集会のために日常的に訪問しているケンタッキー州、インディアナ州、オハイオ州、テネシー州は、北米内陸部の中西部、また南部と呼ばれる地域で、バイブルベルトと呼ばれています。教会の数も多く、キリスト教信仰が社会や文化に深い影響を与えている地域です。私の友人の中には、バイデン候補の勝利宣言を喜ぶ方もいれば、トランプ大統領を支持し、とても落ち込み悲しんでいる方もいます。
このように、同じ福音的なキリスト者と言っても、日本とアメリカの信仰者には大きな感覚の違いがあります。日本では他宗教と共存しながら、キリスト者としての信仰を守るというのは半ば当然のことです。しかし、米国のこの地域では、家庭でも社会でも信仰心のあるクリスチャンに囲まれて育った方々が多く、そのキリスト教信仰の社会的な濃度や密度が薄れて多様な価値観が入ってくるというのは、想像以上の脅威となり得ます。キリスト教信仰を土台として建設されたと言われるアメリカにおいて、キリスト教の社会的な影響力が薄れることに危機感を持つ方が多いのです。
そのような状況で、社会的課題への対応について、教会の中でも意見が分かれて、、、、、

2020年11月22日号掲載記事