賀川豊彦賞に「チェンジングライフ」 出所青少年の自立を支援

第5回賀川豊彦賞(公益財団法人賀川事業団雲柱社主催)が11月6日発表され、受賞団体の一つとして、アドラムキリスト教会(大阪府東大阪市)の野田詠氏牧師が中心となって設立されたNPО法人「チェンジングライフ」が受賞した。

賀川豊彦賞は、「協同組合の父」として日本の社会的弱者の救済活動など多方面にわたる先駆的な活動を展開した賀川豊彦(1888~1960)の志を現代に継承・発展させるために設立されたもので、「社会のひずみの中で、国や地域社会の将来を展望し、先駆的なプロジェクトを立ち上げ、社会活動を展開している団体もしくは個人」を顕彰する。今年度は4団体に奨励賞が贈られるが、その一つがチェンジングライフだ。

金沢刑務所の門前で

チェンジングライフは、少年鑑別所や少年院を出た後に生活拠点を失った少年や、児童養護施設を退所して行き場を失った青少年の自立支援を行っている。その活動は、居場所の提供、相談支援、衣食住などの生活支援、児童養護施設退所者のアフターケアなど、多岐にわたる。
代表の野田氏自身も、かつては武闘派暴走族のリーダーとして他グループとの抗争に明け暮れていた。補導・逮捕を繰り返し、少年院に収容されていた時、家族から差し入れられた聖書が転機をもたらす。「神の御前にあらわでない被造物はありません。神の目にはすべてが裸であり、さらけ出されています」(へブル4・13)との聖句に、「自分の心の中まですべてお見通しの神の視線を感じるようになった」と言う。
出院後、牧師の道を志し、生駒聖書学院に入学。卒業後はアドラムキリスト教会を開拓するとともに、同教会を拠点に少年たちの更生支援の働きを続けてきた。その歩みは、2015年に出版された自叙伝『私を代わりに刑務所に入れてください』(いのちのことば社)に詳しい。
非行に走る少年たちの中には、虐待、貧困、育児放棄など、出生環境や生育環境において、世代間で負の連鎖を背負わされたり、大人から困難を押し付けられたりした者も少なくない。
野田氏たちは、そんな彼らと共に生き、共に育つ寄り添い支援を通して、負の世代間連鎖を幸いの世代間連鎖へと変換することを目指している。援助の手を差し伸べても裏切られることもあるし、「自己責任」が強調される社会の無理解に直面することも少なくない。それでも、神の愛に突き動かされて働きを続けている。
野田氏は今回の受賞について、「信仰を基盤に社会的弱者のための働きを続けた賀川氏は、個人的に大変尊敬する人物の一人。その人の名前を冠した賞をいただけてうれしい。これを励みに、今後とも地道に活動を続けていきたい」と述べた。(レポート・山口暁生=いのちのことば社出版部)