※熊本地震発生直後の2016年の記事を振り返ります。

熊本地震関連ニュース 「熊本バンド」息づく教会協力

 震災で甚大な被害を受けた熊本は、日本のプロテスタントの源流「熊本バンド」のふるさとだ。毎年、花岡山で記念祈祷会が開かれるなど、YMCA、教役者会などが中心となり、超教派のネットワークがあった。福音ルーテル教会は、学校、福祉施設を有し、地域密着の働きをしていた。それぞれ被災しつつ、支援拠点やネットワークを活用し、地域の人々への支援を始めた。それには各地、各団体、救援NGOなどの協力支援の働きも貢献している。(1面に関連記事)【クリスチャン新聞取材班】DSC06748ジェーンズ

「熊本バンド」ゆかりの「熊本洋学校教師館 ジェーンズ邸」が全壊した。NHKほか各報道が伝えた、
同邸宅は1871年(明治4年)に建てられた熊本県最初の西洋建築として、県の重要文化財に指定されている。熊本洋学校に校長として招かれたリロイ・ジェーンズの邸宅だった。

ジェーンズは、授業と別に、この邸宅で聖書研究会などを開いた。そして76年に、信仰決心をした学生約40人が、花岡山において「奉教趣意書」を読み上げるにいたった。学生の中から、多数の日本初期のプロテスタントの指導者を生んだ。

毎年の花岡山で開かれる熊本バンド記念祈祷会や講演会開催の中心となっているのが、熊本YMCA(岡成也総主事)だ。行政からの指定管理施設を含めて、県内で14の施設を運営・管理し、多様なプログラムを展開している。震災では倒壊レベルの被害はなかったが、アクセスの問題も含め、再開には時間がかかるという。各施設では、近隣の水道遮断時は、プールを生活用水として近隣に提供。シャワー室も開放した。2.益城町避難所ストレスケア3.御船 避難所 支援物資 食品

指定管理施設の1つに千200人避難者を受け入れた益城町総合運動公園がある。行政や全国から駆けつけた、災害対応経験のあるYMCAスタッフと協力して避難者に対応した。今後各施設を通じ、ストレスケアを含めた中長期的な支援も見込まれる。日本YMCA同盟(正野隆士会長、島田茂総主事)は支援募金を開設した。

地域とのつながり

日本福音ルーテル教会は熊本市内に5つの学校を有している。1910年創立の九州学院(中央区大江、長岡立一郎理事長、阿部英樹学院長・理事)では、中高の校舎で天井が崩れるなど、被害があり、教職員が対応に奔走した。20日時点で関口教頭によれば、生徒に人的被害はないが、教職員で骨折した人が数人いる。教職員の家屋では全壊、半壊、断水状態などの被害があり、車中泊、避難所泊の人もいる。生徒宅にも被害が予想されるという。
同校では4号館まで校舎があり、1号館は耐震工事を終え、被害は少なかったが、耐震工事直前の2号館以降に、被害があった。内部では壁が崩れるなどして、生徒の立ち入りは困難だ。4号館はガラス面の多い現代的な建築だったたため、ガラス破損の被害が大きい。

2号館建て替えのための仮設校舎があるが、全生徒の使用には足りない。他施設の利用や仮設施設建て増しなど、教室復旧ついても検討中だ。0417健軍1
1926年に創立した九州女学院をルーツに持つ九州ルーテル学院(中央区黒髪、坂根信義理事長、清重尚弘院長・大学学長)では、20日時点で百家事務局長によれば、大学は4月中は休校、中高も休校の見込み。生徒、職員のけがはなかったが自宅に被害があり、避難所で生活する人たちもいる。
中高の鉄骨の駐輪場の一部を市指定の避難所として提供し、200人ほどの食事提供の場、30〜50人ほどの宿泊の場として提供した。

中高の校舎にあった歴史的な2つの煉瓦作りの煙突は、16日未明の本震により崩れ、屋根が空いた状態。校舎の構造的な被害はないが、壁の剥離、教室、研究室など各部屋で窓のひび、備品の倒壊、ゆがみなどがあった状態で、細かな修理が必要となるという。

日本福音ルーテル教会は、九州で戦前から宣教師によって福祉事業を展開してきた。熊本では慈愛園、基督教児童福祉会の2つの社会福祉法人があり、児童養護、障害者支援施設、高齢者介護施設などを10数有する。一部の施設で避難者受け入れなどをした。益城町の広安愛児園では100人規模の避難者が滞在した。0418健軍2
同教会では複数の会堂が、信徒、近隣の人の避難所として利用された。その1つ、熊本市の健軍教会(小泉基牧師)では、震災直後に約30人が会堂に滞在した。3分の2が近隣の人々だった。障害を持つ人や高齢者もいる。小泉牧師は、体操をするなど楽しみや気分転換を取り込み、明るい雰囲気を心がけた。九州地区現地対策本部の岩切牧師は、「ルーテル教会は地域との関わりが深く、自治会などにも関わり、地域の情報共有をしている。避難所が縮小しても、半分ほどの人は家が半壊、全壊で戻るところがない。戻れる人も不安を抱える。大きなことはできないが、できることをしていきたい」と語った。

遠くから励まし

九州キリスト災害支援センター」が発足した会合(一面参照)では、九州各県の教会の牧師、日本国際飢餓対策機構(JIFH)から近藤高史氏やキリスト者学生会(KGK)九州主事の松尾献氏、関西から日本イエス・京都聖徒教会牧師の船田献一氏、関東から日本福音同盟(JEA)の松本順氏(ホーリネス・上野教会牧師)、大井満氏(キリスト合同・板橋教会牧師)、バプ教会連合・国分寺バプテスト教会SOLAスタッフの平田美保氏、池田恵賜氏(JECA・本郷台キリスト教会牧師)など、47人が参加した。

会議
横田氏は次のように話す。「14日の地震で震度7の揺れがあった熊本県の益城町には、熊本東聖書キリスト教会、木山キリスト教会があり、我々も熊本の教役者会が被災した教会に対して行う支援の後方支援を考えていた。だが、16日朝のマグニチュード7・3の本震で、熊本の多くの教会が被災してしまった。熊本は教役者会がしっかりしており、日本ナザレン教団の中出牧夫氏(熊本ナザレン教会牧師)、日本アッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団の本堀秀一氏(希望ヶ丘キリスト教会牧師)を中心に熊本ハーベストチャーチ牧師の中村氏が実務を担って救援本部を立ち上げたが、断水が続き、震度6クラスの大きな余震が続く中、問題がさらに大きくなっていった。私たちが本格的な支援をする必要が生じている。それも短期ではなく、中長期的な支援が必要だ。そのためには協力体制を整える必要があるので、今回、会議を開いた」

松本氏は「九州の教会が一丸となって熊本、大分の支援に立ち上がった。大きな教会ネットワークが被災地を囲むようにして繋がった。この意味は大きい」と言う。「現在、ばらばらに支援物資が被災地に持ち込まれることにより、交通渋滞を巻き起こし、困難を極めている。これからは福岡の拠点に物資を集め、トラックを利用し、効率的に物資を搬送することに決めた。教会は渋滞の原因をつくらないとの決意が表された。被災地の負担を減らすために福岡で物資の仕分けをすることとした」

中村氏
「これまで熊本地震支援センターの中村氏に負担が集中してしまっていたが、それを九州キリスト災害支援センターが引き受け、負担を分散することが決められた。ばらばらの支援の弊害は大きく、非効率で疲れをもたらす。情報を共有し、支援の働きを分担し、共にキリストの愛のわざに仕える。それはまさにキリストのからだ=教会の生きた姿だ。熊本に、九州に立ち上げられた教会ネットワークにこの姿を見た。そして全国の教会のネットワークであるJEAも、被災地を包むようにして全国の教会から被災地の教会へ愛を届ける働きを担いたい」と語った。

NGOの活躍

NGO、NPOなども物的、人的支援に迅速に動いた。
日本国際飢餓対策機構(JIFH)は、16日にスタッフを派遣。パンアキモトのパンの缶詰など物資配布をした。熊本ハーベストチャーチにもスタッフ数人を派遣し、現地支援のコーディネートなどで支えた。20日には「現場は錯綜している。30分で事態は変わる」と述べていた。

国際NGOワールド・ビジョン・ジャパンは、先発隊を送り、避難所で物資を提供した。国際NGOオペレーション・ブレッシング・ジャパン(ドナルド・トムソン代表)は、18日には、現地に到着したスタッフによって物資支援を行った。救世軍は、支援金を募る社会鍋を千代田区の本営前と新宿駅前で実施。国際会議や東北支援に行っていた主要スタッフらも合流し、現地支援を続ける予定だ。そのほか、様々なNGO、NPO、教会、個人が支援に駆けつけた。
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熊本地震から5年を迎えるこの週、クリスチャン新聞オンラインでは、地震発生当時の初期約1か月の報道を振り返ります
記事のリストはこちら → シリーズ「熊本地震から5年」を掲載 https://xn--pckuay0l6a7c1910dfvzb.com/?p=31229
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